●自分の引退を目の前に・・・
事業承継の相談をしに来る社長は明るいそうです。
「そろそろ考えなあかんと思ってなぁ(笑)」
という具合に。
一年続けてきた日本フルハップが発行している『まいんど』への連載が、
来年度も継続となりました。
その取材のため商工会議所を訪れたときに聞いた話です。
社長が明るいのはあくまで表面上のようです。
話を始めると「実は・・・」と途端に顔が曇りはじめるとか。
元気を装っていたものの、
追い詰められているケースが本当に多いようです。
従業員の職を残してあげたい。
取引先やお客さんに迷惑をかけたくない。
会社に対するこんな想いはあるのです。
でも、自分が事業から退くという重大な事件を前に、
どうしても後ろ向きになってしまう・・・
そして後手に回って、気付けば後がないという状況になりがちです。
●事業承継をうまくクリアするには時間がかかる
「事業承継には時間がかかる」
という大前提を意識してもらいたいところです。
たとえば、第三者に事業を売却するという
М&Aという道があります。
買ってもらえば終わりなので、比較的手っ取り早い方法です。
それでも時間はかかるもので、
商工会議所の方も
「3年から5年のスパンで考えるべきでしょう」
とお話をされていました。
ちなみに、М&Aというゴールを迎えられる会社というのは、
現状、希望者のうち1割にも満ちません。
条件がそろい、それなりの準備をして、
「運が良ければ買ってもらえる」
というぐらいのイメージに思っておいたほうが無難でしょう。
個人と会社が分離されていない小さな会社の事情は複雑です。
それに伴って事業承継に時間がかかります。
事業で使っている社長名義の不動産をどうすればいいのか。
銀行に担保で取られている不動産や個人保証をどう処理するか。
株式の後継者への譲渡にかかる税金の問題をどうするか。
大きくなった負債はそのままでいいのか。
家族へ残す遺産の処理や相続税の対策をどうするか。
検討し、解決すべき課題は山のようにあります。
もちろん、社長が退いた後でも事業が上手くいくのか、
という経営的な視点だって必要です。
本来一番大切な部分ですが、案外抜け落ちていたりするものです。
(どうも税金などの形式的なほうに目が向いてしまうようですね)
やはり、早め早めに手を打って行っていただきたいところ。
時間が経てば経つほどに、打てる手は減ってしまうのですから。
最後に、廃業するよりも、会社や事業は
「誰かに継いでもらえた方がほぼ良い結果になる」
ということは、お伝えしておきたいことです。
これはうちのお客様の例を見ても、
僕が自分の事業を他人に譲った経験からしても確信しています。
経済的な面でも、社長の心理的な面でも、です。
あきらめず、面倒くさがらず、
まずは一歩を踏み出していただけることを願います。