会社売却が増えている
自分の会社を売ろうとする取り組み(=M&A)が
増えています。
かつては、会社は売買の対象ではない、
という考え方の方が主流だったかもしれません。
しかし今では都市部を中心に、
かなり“普通の話”になってきている気がします。
M&Aというのは大企業の話であって、
中小零細企業には関係ないと思っていた人も多いでしょう。
でもその波は小さな会社にまで来ています。
中企業のM&Aを専門に手掛ける大手仲介会社の業績が好調なのも、
その証となるはずです。
事業承継の出口としてのM&A
中小零細企業の場合、
M&Aをする理由のかなりの割合は『事業承継』です。
継者がいないことを理由として
外部に引受先を探すパターンです。
たしかにM&Aは事業承継の出口として有効であり、
小さな会社にとっても現実的なツールとなりつつあります。
こんな話を聞いて「よし、うちもM&Aをしよう」と
勢いづく社長さんがいらっしゃるかもしれません。
M&A仲介会社から積極的な売却提案を受けて
その気になっていらっしゃる方もいるかもしれません。
会社を売った方がいいのか、悪いのか。
メリットとデメリットを後ほど考えます。
ただ、先に抑えておいていただきたいのは、
「実際に売れる会社は少ない」ということです。
この点は次のページで詳しく伝えます。
M&Aという選択肢のメリット・デメリット
事業承継の出口をM&Aにする場合を、
メリットデメリットで考察してみましょう。
M&Aのメリット
➢手離れがいい
誰かに継がせようと思うと思えば、その道のりは大変です。
後継者候補を選び、育て、引きつぎ・・・
時間も労力もかかります。
一方、M&Aとなると通常の承継よりも時間は相当短く終わります。
あえてグロテスクな言い方をすれば、
売り抜ければそれで終わりなのです。
会社を処理しなければいけない対象だと定義するならば、
手離れがよい方法だと言えるでしょう。
➢お金が一時金で手に入る
M&Aがうまくいけばお金が手に入ります。
しかも通常の場合は、一時金となります。
もちろん金額の多寡は、会社の状況や購入希望の会社の意欲の強さ、
経済状況などによって大きく変わります。
人生において多額の現金が一気に手に入る機会は少ないもの。
М&Aが上手く成就すればそれが現実となります。
これまでスロットマシーンの中に我慢して貯めてきたコインを、
ボタンひとつで一気に吐き出させるように清算できるのです。
なお、一気にお金が動くと、
それだけ税金の影響を受けるもの。
得られるお金を数えるだけでなく、
トータルの課税や、
節税の余地なども考えておきたいところです。
➢会社を残せる
あるM&A仲介会社の場合
「会社売却を希望してくるうちの8割から9割は事業承継がらみ」
だそうです。
後継者不在のケースが多い中小企業の世界において、
事業承継は切実な問題です。
外部に売ることで会社が残せるならば、
という苦渋の決断をしている場合もあるのでしょう。
デメリット
➢М&A後の経営に手を出せない
M&Aの交渉場面で、自分が去ったあとやり方などについて、
いろいろと買い手の会社に注文を付けているケースがあります。
しかし、ほとんど意味はないでしょう。
有効なやり方は、その時によって違います。
誰がやるかでも結果は変わるのです。
買う側だって、過去のトップの意向に
いちいちかまっていられない都合だってあるでしょう。
それを不満と思うよりは、
「そんなものだ」と前提にしてしまったほうが良い気がします。
いつまでも先代にトップの気分で振る舞われたら、
お互い気持ちよくありません。
➢情報流出のリスクがある
M&Aの実務では、関係者に守秘義務契約が取り交わされるのが通常です。
しかし契約書を作れば秘密が漏れないというわけでもありません。
話はどこから漏れるかわからないし、
漏れていなくても従業員などの関係者は、
社長の動きを敏感に察するものです。
一度「会社を売ろうとしている」という動きが伝われば、
社内は浮足立つこともあるでしょう。
その様子をさらに感じ取って、
取引先は不信を持つかもしれません。
一度この状態になってしまうと難しいものがあります。
➢仲介手数料が高い
M&Aは自分で買い手を探す場合と、
仲介会社に相手を探してもらう場合があります。
後者の場合、その成功報酬が高額となるようで、
現場にいる社長からも不満を聞いたことが何度もありました。
まだまだ新しい産業のため、
サービスとして落ち着いていなかったり、
価格競争の原理が機能していなかったりするのかもしれません。
なお、法律事務所や会計事務所などをサポーターとして
利用する場合もあるでしょうが、
こちらもそれなりのコストになるケースが多いでしょう。
➢そう簡単には売れない
先述しているように、
売りたくても売れない会社は山のようにあります。
誰にでも、どの会社でも採用可能な出口だとは言えません。
普通は売れないものと認識し、
夢だけ見て落とし穴にはまらないようにしたいところです。
逆に言えば、買ってもらえる会社をつくった社長は、
それだけの栄誉を手にしたとも考えられるのでしょう。
→ М&Aの支援について