廃業を考えているときに、
その決断を邪魔する代表的な不安がいくつかあります。
その一つが「従業員の生活をどうするの?」です。
会社がなくなってしまったら、
彼ら彼女らの仕事がなくなってしまう。
ひいては給料が無くなって、
生活に困窮してしまうということです。
これを恐れて
なかなか廃業を決断できない場合があるのです。
社長の「従業員のために」は本心ですか?
「従業員を路頭に迷わせるわけにはいかない」
話を進める前に、
ちょっとこの社長の発言の真意を探ってみましょうか。
もちろん社長の責任感が
こう発言させている場合だってあるでしょう。
それはそれで額面通り受け取りたいと思います。
でも、案外そうじゃない場合もあるように感じています。
きれいごとを言ってるだけだったり、
いい顔をしていたいだけだったり・・・
はたまた、苦しい決断を先延ばししたい深層心理から、
もっともらしいことを語っている場合も・・・
社長は本心を語っていない可能性があるのです。
僕のようなカウンセリングや
コンサルティングの役割をする人間は
特に表面上の言葉にだまされてはいけません。
「どんなときも本心を語らなければならない」と
青臭いことを言いたいのではありません。
社長の中には、
本音と建て前を使い分けることを
処世術としてきた人がいるはずです。
ずっとそれを繰り返してきたために、
自分の本音のところが見えなくなっていたり、
出せなくなっているケースが考えられるのです。
会社の終末をどうするかという重大な局面においては、
自分の本音に素直にならないと
打ち手を間違える恐れがあります。
しかも後悔したって、
終わりの場面のやり直しは効きません。
時にたちどまり、
自分の本心は何かを確認していただければ。
無理なことは無理だと受け入れるべき
話を元に戻しましょう。
「社員の生活があるから会社をやめらえない」
と言う社長に対して、僕は
「できないことで悩み苦しむのはやめましょう」
と答えています。
たとえ本心で従業員のことを心配しているのであっても、
会社の状況や社長の年齢などの条件を考慮したら
この先もずっと雇用を継続することが
できない場合がほとんどでしょう。
それをどれでけ義務感を強くしたところで、
無理なことは無理なのです。
悪いのは、その無理を重ねたあげく、
もっと状況を悪くしてしまうこと。
今だったら払えた給料や退職金すら
将来では払えなくなってしまうかもしれません。
社長もスタッフもお互いのために、
悪いことはさっさと片づけて
次に進んだほうが結果はよくなるものです。
これまで何百社と見てきましたが、
社長が想いに反し、
従業員は会社のことをそんなに想っていないものです。
いざ廃業となったら、
ドライにさらりと次を見つけて転職していきます。
その前の段階であっさり見切りをつけて
去っていく場合だってよくあります。
商売の世界の話なのですから、
感情論は控えめぐらいで
ちょうどいい気がしています。
廃業時、従業員のためにできること
廃業やむなしとなったところで、
従業員のためにしてあげられることはないでしょうか。
従業員のために何かしてあげたいならば、
こちらを頑張るべきでしょう。
まず、転職できるように
経験を積ませたりして
力をつけてあげることでしょう。
まさに、魚を取ってあげるのではなく、
魚の取り方を教えてあげることです。
もちろん短い時間で
どうこうできる話ではありません。
もうちょっと具体的な話としては、
転職活動ができる期間を
長めにとってあげることです。
面接や情報収集のために
仕事の融通を利かせてあげれば喜ばれるでしょう。
社長が関係する他社への就職の可否を
聞いてみてあげるのもいいと思います。
再就職先がみるかるようなアシストを
してあげてはどうでしょうか。
あとは、給料や退職金など
払うべきものをしっかり払ってあげるのは
当然です。
気持ちよく終わらせたいですね。
ちなみに、
従業員の方も最後までしっかり働くべきです。
もう会社が終わるからといって手を抜くとか、
適当にこなすというのはよろしくありません。
こういう場面で人間性はもろに出てしまいます。
そして人というのは人のことをよく見ています。
沈む船だと分かっていながら
最後まで残って頑張っていた従業員さんに、
他社の社長から素敵なオファーが来たケースもありました。
会社をやらせて欲しいと言われたら?
最後になります。
過去のケースでは「廃業をする」という決断を伝えた後、
「だったら自分に会社をやらせてください」と
一部の従業員から声があがったことがあります。
特に問題なければ、
前向きに進めてあげてはいかがでしょうか。
純粋に起業するよりも、
その人にとってのメリットがあるはずです。
社長にとっても
清算処理のコストを削減できたりといった
メリットがあるかもしれません。
僕の得意とする、
会社分割などをつかった分社手法が
こういう時には便利なツールとなります。
ご興味ある方は、こちらのサイトもご覧いただければ。