つい先日も「会社分割をしたい」という相談がありました。
でも結局、分社は見送られました。
まただ、という感じです。
こんな風に、会社分割等の分社の依頼が奥村に持ちかけられたものの、最終的には「分社しない」という落としどころになることがたくさんあります。
会社分割などの分社手法は、経営の効率化はもとより、事業承継や会社再生、M&Aなどの問題解決に役立つ場面はたくさんあります。
会社を分けるというシンプルなアクションですが、使い勝手がよく、汎用性があるのです。
ただ、いかに会社を分けるかは、簡単ではありません。
税金や財務、法律、人事など様々な分野に気を配らなければいけません。
どの手法をどの様に使うかによって、リスクやコストがかなり変わってきます。
会社にメスを入れるのですから、人間にたとえれば手術です。
簡単ではないし、下手に切ったら命を奪いかねません。
私は、この会社分割を主とする分社コンサルティングを相当な数提供してきました。
事業承継や廃業に軸足を移す10年以上前は、1月4,5件のペースで会社分割をこなしていたこともあります。
一人のコンサルタント(司法書士)としては、驚異的なペースのはずです。
分社を手掛けた実績は豊富だし、得意なのです。
でも、「分社は見送りましょう」という結論になるケースが多いのです。
おそらくここ10年だと、分社の相談を受けて実際に手掛けたケースより、分社を見送ることにさせたケースのほうが2倍も、3倍も多いことでしょう。
ここには重要な意味があると思います。
分社を実施した数ではなく、「分社をストップさせた数」の多さに注目していただきたいのです。
結局分社をしないケースが多いということは、なにを意味しているのでしょうか。
まず、僕が仕事を売り込んでいないということを意味します。
分社のコンサルティングをどうしても受けたければ、実施するメリットだけを強くアピールして「是非やりましょう!」と畳みかければいいことでしょう。
でも私は、仕事を追いかけていません。
また、幅広い手口を持っているという意味でもあります。
コンサルタントが問題解決の手法をひとつしかもっていなければ、それを提供するしかありません。
しかし、複数の手口があれば違います。
分社以外の解決の手口を持っているから、「分社をしない」という結論になるということも多いのです。
そして最後は、視野が広い、全体を視ているという意味でもあります。
ある側面から見たら分社が有効でも、別の視点からはそうでないケースもあります。
手術に例えたように、分社自体にもリスクや副作用があります。
全体像に気を配った結果、「分社はやめておこう」となるケースも多いのです。
ひとつ事例を紹介してみましょう。
ある会社に経営者が2人いて、それぞれが別の事業の責任者となっていました。
事業どうしは関連性がないので、別会社への切り分けは可能です。
二人の経営者は「今後も同じ会社でやっていくべきか」を悩んでいました。
お一人は、どちらかと言えば「別の会社でやりたい」と考えていて、もう一人はできるだけ「同じ会社でやりたい」と考えていました。
相談当初、この状況では分社するのがセオリーだと私は感じていました。
しかし、双方の本音を聞いたり、私の考えや経験を伝えたうえで二人の考えを引き出したところ、結論は変わりました。
「分社はいつでもできる。それよりまず、お互いが同じ会社でやっていけるような会社全体としてのビジョンを描けないかチャレンジしてみよう」と。
こんな感じです。
私としては分社の依頼をしてもらったほうが、ずっと大きな報酬をいただけるのは事実。
しかし、自己都合ではなく、お客さんにとって一番いい価値を提供しようとすれば、分社が答えではないケースのほうが多いのです。
このあたりは、やせ我慢をしながらも、これまで徹底してこれました。
誰も褒めてくれないから、自分で自分を褒めておきます。
今回の記事は、みなさんが誰に相談するか?を検討する際の参考になるのではないでしょうか。
コンサルタントや専門業者の中には、「相談者に最適なものを提供しよう」とする人と、相談という建前で「自分が売りたいものを売ろう」としている人がいるかもしれないと用心しておくだけでも価値があります。