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【中小企業社長と保険外交員さん必読!】生命保険で、借金、退職金、遺産分割、事業承継の問題を解決する方法

こんにちは、事業承継デザイナーの奥村聡です。
今日は「事業承継×生命保険」を考えてみましょう。

中小企業の社長さんだけでなく、生命保険を提案したい保険外交員の方にも役立つ記事になれば幸いです。

そういえば3か月ほど前に、某保険会社がお客様向けに発行している冊子を編集するため、取材インタビューを受けました。
冊子の現物はいただけないのかと思いつつ、、、まあいいか。(笑)


生命保険の一番の価値は、やっぱりいざというときの保障機能でしょう。
生命保険に加入していれば、被保険者が死亡したときに受取人にお金が支払われる仕組みです。

ということは、生命保険が最も活躍するのは社長の死亡時(=相続時)ということになります。

この点は、事業承継の本筋と少々ズレることをご認識ください。
本来、事業承継の問題は、社長が存命のうちに解決していただきたいテーマだからです。
社長の死亡によって事業承継がはじまるのは、経営上望ましくありません。

とはいえ、相続と事業承継が切っても切れない関係であることは否定できません。
生前のうちから仕込んでおいて、あえて相続発生時に打ち手を発動させるようなケースもありますしね。

目次

会社で生命保険に入る場合の活用法

会社で生命保険に入るケースと、社長個人で入るケースに分けて、その活用法を考えてみましょう。

まず、生命保険の契約者を会社とし、被保険者を社長とする場合の生命保険(=事業保険)活用です。

相続時の自社株の買取資金を生命保険で調達

会社の株式(自社株)を有していた社長が、そのまま亡くなる。
すると、株式は亡社長の相続財産となり、相続人に権利が移ります。

このとき「会社にとって都合が悪い人間に株式が渡ってしまう」可能性があります。
また別のケースでは、株式を相続した遺族が「自社株は要らないから金に換えてほしい」という希望を持つ場合もあるでしょう。

これらの場面では、会社が「自社株式を相続人から買い上げたい」というニーズが生じます。
自社株の買取資金として、生命保険が活きる場面です。
被保険者である社長が死亡したことで、会社に自社株の買取資金が供給されるようにしておくようにすることができるのです。

なお、株式を自社(発行会社)に買い取らせると、通常、税金は割高になります。
みなし配当という扱いを受け、売り手の利益に対して最大55%近くの課税がされることもあるようです。

しかし、株式を相続で入手した人が、一定期間内に発行会社に売る場合は特例扱いとなります。
相続開始から3年10ヶ月以内ならば、株式売却で得た利益に対して約20%の課税と限定されるようです。

自社株買取のポイント

この生命保険を利用した自社株買取について、ポイントになりそうなところも考えてみます。

一つ目は、あらかじめ定款に規定しておくことでしょう。
定款には「株主に相続が起きたとき、会社が相続人に株式の売渡を請求する権利」を規定することができます。
この規定を使うか否かはその時に決めればいいことなので、とりあえず定款に載せておいてはどうでしょうか。

相続を契機に株式が分散して後々面倒になることもありますが、この規定が分散防止の手段にもなります。

もう一、売り手として、「すぐに売れるかたちを作るようにしておくこと」もポイントになると思います。

遺産分割前の共有状態だと、なかなか会社との間で株式売買の話を進めることが難しくなります。
遺言等を使って早く権利関係を確定させ、株式売買の交渉や手続きをスムーズに行えるようにしておけるといいでしょう。

生命保険で死亡退職金を遺族に払い、納税資金とする

続いての活用法は、社長の退職金を支払うための原資として生命保険を活用する方法です。
「当たり前すぎる!」と言われてしまいそうですが・・・

社長が亡くなったときに、会社に死亡保険金が入ります。
そのお金で退職金を支払うというものです。

遺族にお金が支払われることになるので、相続税が大きくなる場合は納税資金に充てることができます。
これは場合によっては、とてもとても、ありがたいお金となるでしょう。

死亡保険金を受け取れるようにしておくこと

死亡退職金を払うためには、あらかじめ退職金の規定を整備しておいたほうがいいかもしれません。

あと盲点となりやすいことは、会社のほうで「保険金を受け取れるようにしておく」という点です。

生命保険の死亡保険金は、次の社長が請求することになります。
権限を証明するためには、登記上の代表者を変更しなければいけません。
もし取締役が亡き社長しかいなかったような会社では、次の代表取締役を登記するために株主総会で新たな取締役を選任してもらわないといけません。

ところが、遺産分割でもめているため株主総会が機能しない場合があったりします。
亡き社長を相続することを親族が恐れて、みんなで相続放棄をしてしまうこともあります。

こうなると株主がいなくなるので、やっぱり株主総会が開けず、代表取締役の変更登記が非常に困難になります。

私が過去に関わったケースでは「死亡保険金の請求は、生命保険に加入したときの印鑑で押印しないといけない」と言われたことがありました。
死亡診断書の提出を求められたこともあります。
死亡診断書は遺族でないと取得が困難なため、会社と遺族の歩調が合っていない場合には保険請求に支障をきたします。

死亡退職金を遺族に払う以前の問題として、ちゃんと会社が死亡保険金を受け取れるようにしておかないといけませんね。

社長にかけた生命保険で運転資金の補填

社長に万が一があったときの「借金の返済のため」に生命保険に加入しておくのも定番です。

中小企業の場合、社長個人の力量で経営が持続できているケースもよくあります。
その社長がいなくなってしまったとき、経営が傾いたとしてもなんの不思議もありません。

「大黒柱を失った時に、会社が借金を完済してしまえるように生命保険に入っておきましょう」という提案は普通に行われているのではないでしょうか。

死亡前に運転資金が足りなくなったときでも、解約返戻金を担保にお金を借りることもできるという点も、この提案のセットになります。

他の事業承継対策は、会社経営を危うくすることも!

会社で生命保険に入ることのメリットについて、最後にもう一つ付け加えさせていただきます。

生命保険以外の事業承継対策(というか株価対策)では、たとえば会社で不動産を買って自社株の評価を引き下げるなどの提案がよくなされます。
ある意味、わざとお金を使い、さらには、あえて会社の価値を傷つけることで株価を下げようという意味ももちます。

これって、本末転倒ですよね。

しかし、生命保険の活用であれば、健全な事業承継対策が可能です。
「自社はどんな対策法を採用すべきか」を考える際、このあたりを前提として押さえておいていただけるといいでしょう。

個人で生命保険に入る場合

今度は会社ではなく、個人が契約者となる生命保険の活用案を考えてみましょう。

生命保険で暦年贈与を確かなものとする

社長の相続税対策として『生前贈与』は定番です。
多額の資産を持ったまま無くなると高い相続税がかかるので、贈与で、生きているうちにできるだけ財産を移転させてしまおうという意図です。

その中でも毎年贈与税の基礎控除額を使う「暦年贈与」は、手軽で分かりやすいものでしょう。
「年間110万円までの贈与ならば無税だから、その贈与を毎年やろう」という相続税対策です。

相続税の取り扱いが変わり、生前の節税対策としての時間的要件が厳しくなりましたが、それでも、この暦年贈与が使われなくなることはないのでしょう。

税務署から名義預金と指摘されるリスク

暦年贈与を使った節税対策の懸念は、2つあると思います。

ひとつは、名義預金だと税務署から指摘されるリスクです。
ある社長が亡くなった後、税務署から相続税の調査が入り、「暦年贈与による生前贈与を否定された」と会社の後継者となった子供が嘆くのを聞いたことがあります。
子供や孫名義の口座に暦年贈与で貯めていた預金を、「亡き社長のものだ」と指摘されたそうです。

生前、通帳や印鑑の保管は亡くなった社長がしていました。
契約書にも不備があったようです。
税務署はこんな状況に対して「それでは贈与が成立していない」と主張しました。

生前の贈与が成立していないということになれば、預金は亡き社長の財産だったということされてしまいます。
社長の相続財産が増えます
結果、相続税は増えたし、延滞税も発生してしまいました。

暦年贈与と認められるためには、「贈与を受けた相手が自由にお金を使える状態になっていること」などを含めた要件を満たさなければならないのです。

無駄遣いさせないためには?

そうなると今度は、孫や子供に自由に使えるお金をホイホイあげていいのかという別の論点が生じます。

なんの努力も、苦労もせずして、毎年110万円もらえたらどうでしょうか。
私だったら、旅行に行くなり、車を買うなり、まあ無駄遣いしかしないでしょう(笑)
もらった人にとってはあぶく銭です。

このあたりは教育論であったり、お金の哲学になります。
お金を贈与する側の本音としては、「無駄遣いなんてしないで、将来のために貯めておいてほしい」というケースが多いのではないでしょうか。

そこで、生命保険です。

お金を子供や孫にお金を直接贈与するのではなく、毎年の生命保険の保険料を社長が払ってあげるというやり方が考えられます。
「お金は贈与するが、それは保険料にするため」という約束です。

預金であればいつでも引き出せますが、保険料として支払われたものは解約手続きを経なければ自由に使えません。
贈与を受けた相手としては、無駄遣いに対する心理的ハードルがグイッと高くなるのです。

生命保険も使うことで、先の名義預金の落とし穴も回避しやすくなります。
このあたりの具体的なやり方は、ぜひ保険会社の外交員さんと詰めてください。

生命保険の非課税枠を使って相続税を安くする

そもそも生命保険には、相続税を計算する際の非課税枠があります。
「500万円×法定相続人の数」が非課税枠です。

たとえば、社長が死亡時に3000万円の現預金を持っていて、3人の相続人がいたとします。
現預金の3000万円はまるまる相続財産となり、課税対象となります。

でも、社長が生命保険に入っていて、相続発生時、3人に1000万円ずつ死亡保険金が払われるようにしておいたらどうか。
1500万円(3人×500万)が非課税枠になるので、半分だけが相続税の対象となります。

面倒やリスクの低さなどからしても、これは優先して使ったほうがいい手口だと感じます。

納税資金や代償分割、遺留分対策にも生命保険が役立つ

相続時は様々な資金ニーズが発生するので、生命保険を活用して準備しておくことはオススメです。

たとえば、相続税を納税するための資金を生命保険で準備したり、と。
相続税は、節税して減らすことばかりに目がいきがちですが、きっちり安心して納税できるように準備しておくことのほうが優先です。

遺産分割の際の調整のために、生命保険を使うこともできます。

もし、複数の相続人がいるのに、相続財産は不動産一つしかなかったら遺産分割が困難です。
安易に不動産を共有にしてお茶を濁しても、問題を先送りすることになるだけでしょう。

生命保険を使えば、お金で調整することができるようになります。
お金を他の兄弟に支払う代わりに、不動産の名義は誰か一人が引き継ぐという決着が可能となるのです。

他にも、遺言等である相続人の遺留分を害してしまっているとき、生命保険の死亡保険金で補償してあげるケースもあります。

死亡保険金には遺産分割がいらない

生命保険の使い勝手がいいのは、「遺産分割をしないでもお金が動かせる」という特性があるためです。

たとえば、社長が預金を遺して亡くなったとします。
お金だから柔軟に使えそうな気がするかもしれませんが、このお金を使うためには結構面倒な手続きが待っています。
相続人間全員の実印が必要で、故人が生まれてから死ぬまでの戸籍を集めて……それで、銀行所定の手続きを踏んでからようやく引き出せるという具合です。

すべての相続人が協力的で、意思疎通ができていないと難しいわけですが、そうでないケースも非常に多いわけです。

でも、生命保険ならばそんな面倒がありません。
生命保険の受取人と生命保険会社とのやり取りだけで、スピーディーに死亡保険金を支給してもらえます

また、この死亡保険金は遺産分割の対象外なので、受け取った保険金の使途に制限もありません。
相続の実態を体験すると、このありがたさが身に染みます。

相続放棄をしても生命保険でお金を届けられる

生命保険の死亡保険金は、相続財産じゃないから遺産分割の対象にならないというお話はすでにいたしました。
被保険者が亡くなった後は、ただ、生命保険会社と受取人の間における関係でしかないということです。

この性質が、「超」使えるときがあるのです。

社長が亡くなった後、家族がたとえ相続放棄をしても、生命保険の受取人ならば死亡保険金を受け取れるのです。
逆の見方をすれば、相続放棄をした場合、故人の残した預金や不動産は相続できないという意味でもあります。

社長を相続すると個人保証まで引き継いでしまう

生命保険が大活躍する場面をもう少し深く見てみましょう。

亡くなった社長が経営していた会社には金融機関からの大きな借金があり、業績も芳しくありません。
亡き社長は金融機関からの借金を個人保証(連帯保証)していました。

もし、配偶者や子供が普通に亡き社長を相続したら、この個人保証まで相続してしまいます。
相続というものは個人を包括的に引き継ぐものであり、部分的によいところだけを引き継ぐということが許されないからです。

亡社長を相続したとすれば、個人保証も自動的に相続します。
この会社は借金の返済が難しい状況のため、いつ会社が潰れてもおかしくありません。
そして会社が潰れれば、保証人である相続人が取り立てを受けることになるのです。

相続放棄をすれば、この地獄のような連鎖から逃れることができます。
相続発生後、一定期間内に家庭裁判所に申立てることで実現できます。

巷の相続を見ていると、中小企業の経営者が亡くなったときに、なにも気にしないで家族が相続をしている場面をよく見かけます。
個人保証を負う社長を相続することはリスクが高く、もっと慎重になったほうがいいと思うのですが……

私の過去のお客さんにも、うっかり社長を相続して、後に地獄を見たケースが何件もありました。

何も考えずに亡くなった社長を相続して、知らず知らずに個人保証まで引き継いだ。
そして会社が傾いた時に自分まで破産しなければならなくなった。
こんなパターンです。

相続放棄と生命保険で対策を打つ

亡き社長が負っていた連帯保証や借金から逃れるためには、相続放棄さえすればいいのです。
これだけで最悪は回避できます。

ただ、相続放棄をすると、亡き社長が遺した資産も一切引継げなくなってしまいます。
仮に個人資産として預金や不動産などの価値があったとしても、です。

もったいないし、悔しいですね。
そこで生命保険が活用できるのです。

生命保険ならば亡き社長の相続を放棄していても受け取れます。
現金や不動産を遺すのではなく、家族を受取人とした生命保険をかけておけばいいのです。

これで社長に万が一が起きたときでも、生命保険会社から受取人に保険金が支払われます。
義務や負債まで追うことなく、会社の債権者に止められることもないのです。

いかがでしょうか。

前に紹介した「社長が亡くなったときに運転資金の補填ができるようにする」という生命保険の活用法は、頻繁に提案されているし、実際に行われているケースも多いと思います。
しかし、あまりに借金が大きくなっている会社の場合だと、生命保険が入ったところで焼け石に水となります。
こんな状況の会社は決して少なくありません。

そんなときは、こちらの「家族が相続放棄をすることを想定した生命保険の活用法」に切り替えてはどうでしょうか。
会社の借金を返すことに固執することをやめて、家族を守るというスタンスに切り替えるという意味合いです。

おわりに

最後までお読みいただきありがとうございます。

この記事では、事業承継・社長の相続における生命保険の活用について考えてみました。

中小企業経営者のみなさまへ

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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は1000社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられた神戸に住むコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』
ゴールを見すえる社長のための会【着地戦略会】主宰

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