再生手法は何があるか?
経営環境の変化に伴い、業績が悪化することがあります。
立て直しを図るにも通常の経営努力では足りない場合もあるでしょう。
再生手法を利用して経営再建を図るしかありません。
ここではまずオーソドックスな会社の再生手法を見てみましょう。
なお、法的ツールには様々なものがありますが、
代表的なものだけを紹介します。
銀行債務のリスケジュール(リスケ)
財務内容や収益が悪化し、資金繰りが苦しくなってきた・・・
通常は銀行からの借入でしのごうとするのでしょう。
しかし、銀行がお金を貸してくれない場合も当然あります。
またなかには
「借金でしのぐのではなく根本的な手だてが必要だ」と、
改革に乗り出す社長もいるかもしれません。
そんなときまず考えるのは「リスケジュール」でしょう。
銀行に借金の返済を猶予してもらい、
その間に会社の立て直しをしようとするものです。
例えば元金の返済をストップし、
当面、利息の支払いにしてもらうようなケースが
代表例となります。
リスケジュールを銀行に認めてもらうには、
再生計画を提出して承認してもらう必要があります。
先方からコンサルタントの受け入れなどを
希望されることがあるかもしれません。
本気で再建計画を作る
リスケを受けるために
渋々再建計画を提出している場合が現場では多い様子です。
顧問の会計事務所に丸投げして、
とりあえず希望的な数字を羅列して作らせたり、と。
金融機関側もそんなことは分かっているものの、
制度としてそうなっているから仕方ないと
思っているのかもしれません。
たしかに時間的猶予があるので、
当初はいいのかもしれません。
しかし、それでは経営を再建することはできないでしょう。
抜本的な解決に踏み込み、
それを実現する計画はいずれ必要になります。
民事再生法や第二会社方式などの外科手術
返済の猶予をしてもらった程度では
とても復活できないレベルまで悪化している場合もあるでしょう。
その時は外科手術とも言えるような
法的な手法を使う必要があります。
本来ならば銀行との話し合いで、
債権カット等が導き出せればいいのですが、
それは先方の都合もあって難しいところです。
リスケだけでは再生が見込めないときは
外科手術的な手法の活用も考えてみましょう。
民事再生法
会社の負債がが膨らんで経営困難に陥った際、
裁判所の関与で事業の再生を図る手続きが民事再生です。
裁判所に提出する書類などは破産と似ていますが、
こちらは事業継続を前提としています。
実情や事業の将来性などを加味した返済計画を作成し、
可否を問います。
認められれば借金を一部免除してもらうことも可能です。
民事再生のデメリット
民事再生は強制力を持って再建を進められるメリットがある一方、
使いづらい面もあります。
たとえば、
債権者視点では民事再生を利用した時点で倒産となり、
信用を損ないます。
また、経営陣の退任は必須ではないものの、
社長は借入の個人保証をしている場合がほとんどなので、
負債の足かせが外れません。
裁判所への予納金なども含め、
コストが高くなることもネックです。
第二会社方式
「民事再生のデメリットを回避できる」と
第二会社方式と呼ばれるものが注目されることがありました。
会社分割等を使って会社をいい部分と悪い部分で2社に分け、
良いほうの会社だけでも生かそうとするものです。
借金は悪い方の会社に残すので、
理屈上、良いほうの会社は身軽になって
事業継続が可能になります。
裁判所が関与せず、早くて安くできる点がメリットです。
第二会社方式の問題点は?
第二会社方式が注目されると同時に、こ
の手法の乱用ととられる案件がたくさん現れました。
借金を無理やり引きちぎって、
債権者を不当に害するようなものです。
なお、後の判例で
このような分社の使い方への厳しい結論が出ています。
たとえそうでなくても、債権者の同意もなく、
一方的に不利益を与えるようなやり方をしていては
会社なんて再生できないと考えます。
ズルをすればしっぺ返しがやってくるのです。
責任を取るべき本人が社長を続けようとする矛盾
また、もうひとつの問題として、
第二会社方式をつかったとき、
「誰が良い方の会社の社長をやるのか」があります。
もし負債が軽くなった良い方の会社を
先代社長が引き続きやろうものなら、
債権者は納得しないはずです。
自分で作った借金の責任を放り出して、
きれいな会社の経営は続けようと、
いうようなものですから。
この点、事業継承時に第二会社方式を利用して
後継者に良い方の会社を託すことはとても相性がいいのです。
大切な順番を意識する
この記事の終わりに、意識の持ち方についてお話させてください。
資金繰りが苦しくなると、
立場的に下の相手に無理を言うことになりがちです。
たとえば仕入れ先の買掛金の支払いを後回しにしたり、と。
しかし、本当に苦しくなった時に
頼りになるのは近いところにいる仲間です。
商品を仕入れさせてくれる取引先や、
外注で仕事をこなしてくれる下請け先、
さらには自社のスタッフです。
彼らを大切にしておかねければ、
ピンチのときにそっぽを向かれて再建が不能になります。
一方、銀行は媚びを売ったところで、
本当に苦しいときにはお金を貸してくれません。
銀行への借金の返済は無理をしてでも続けるのに、
仕入先の買掛金は払わない。
これは優先順位を間違っていると思わずにはいられないのです。