出版の勉強のため講座に通っていたときに「出版とは個人を上場させることだ」みたいな話を先生がしていました。
当時はそれを聞き「名が売れて、他人から目を光らせるようになるのか」ぐらいにしか思いませんでした。
「コンビニでエッチな本とか読みにくくなるなぁ」と・・・
その講座が終わってから、本を出すまでに相当な時間を要しました。
とりあえず実現できるまであきらめずに粘り続けました。
なんども企画書を書き、実際に原稿も書いてみたことも。
4冊分は書きましたが、それらはすべて日の目を見ないボツ作です。
そんなこんなで本を書こうと心に決めてから4年あまり。
ようやく『今ある会社をリノベーションして起業する』の出版が決まりました。
この頃になると私的な欲はほとんど無くなっていました。
当初はたしかにあったはずです。
スケベ心や下心がたんまりと。
「本を出して名を売りたい」とか「仕事をいっぱい取りたい」とか。
しかし何度も壁に打ち返され、いつしか私欲は虚勢されていました。
もうカフェインが除去された水出しコーヒーレベルです。
ただ純粋に、世の中に対し、僕がいる場所から役に立つ価値を投げようとしていました。
「社会にこのコンセプトが世の中に必要だ」とも確信しつつ。
この境地まで行くと、不思議と当たり前のように本が出せました。
これが先生の言っていた『自分を上場させる』だったのでしょう。
ちなみに、あれだけ苦労をしたのに本を出せることが決まったときは、あまりうれしく感じませんでした。
自分の欲が出版に乗っかっていたら、もっと喜べたでしょう。
しかし僕が感じていたのは、やらねばならぬという重たい使命感ばかりです。
この本を出せたからには、事業承継の分野を背負っていかなければならない、と。
上場してしまった責任みたいなものでしょうか。
仕事では中小企業の社長さんの「終活」を司っています。
引退や、息子や従業員への事業承継。
ときに廃業だったりМ&Aという選択肢もあります。
社長はいろいろ悩みます。
でも、いくら考えても答えが出てこない場合があります。
そんなとき、個人を上場させる感覚でものを考えてみるのも有効かもしれません。
会社を公器とし、それを担うパブリックな存在として自分を定義する。
自分のためじゃなくて、世の中にどう役立つべきか。
社会との関係性の中でどうあるべきか。
すると必然的に答えが出てくる場合があるような気がします。
事業承継等を個人の問題とするのではなく、もっと大きな視点で見てみてはどうでしょうか。
こうして導き出された結論は、使命感とともに社長に力をもたらします。
決断を肚に落し、ブレない力を与えてくれます。
パブリックに生きるというときれいごとの理想論に聞こえるかもしれません。
しかし、そうすることが自分に力を与え、自分を守ってくれることがあるはずです。
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