ある会社の後継者候補の方から相談がありました。
「父親である先代社長との関係がうまくいっていない」と。
「あれやれ!」「これやれ!」と一方的に指示をされる。
ときに頭ごなしに怒られる、と。
「自分ももう50歳だし、このままでは・・・」
経営は自分にまかせてもらい、社長には会社から身を引いてもらいと思っているようです。
でも、そんなことを言っても通じる相手じゃないと、諦め気味でもありました。
親と子、社長と後継者の間には、第三者の僕には理解できない何かがあるのでしょう。
しかし第三者だから言えることもあるはずです。
「そんなに今の関係が嫌ならば、自分に会社を任せるか決めてもらえばどうですか。社長はもうバトンを譲っておかしくない年齢です。それでダメなら出て行くぐらいの覚悟で。」
こんなことを聞いてみました。
すると「そんなことを言って本当に会社を辞めることになったらどうしたらいいんですか」と、後継者さん。
私としては、継がせてもらないなら、自分で別に会社を立ち上げるぐらいの気概があっても良いと思うのですが。
そんな発想やマインドは全然持っていない様子です。
遅かれ早かれ社長になろうという立場の方なのです。
少しぐらい起業家精神があった方がいいと思いました。
いろんな後継者候補の方とお話をしていると、同じように感じるケースがたまあります。
親の会社という閉じられた世界の中にどっぷり浸かっていたら、独立心なんてなくなってしまうのかもしれません。
先代社長の言う通りに実行することが、会社や後継者にとって一番良い生存戦略となる場合だってあるのでしょう。
しかし、いつまでもそのままではいられません。
先代社長が会社を去る時は必ずやってきます。
後継者はどこかでマインドを切り替えなければいけないのです。
先代社長と後継者、親と子。
こう考えると主従の関係かもしれません。
しかし、事業継承というバトンの受け渡しを考えれば、そこに主従の差はありません。
水平な関係でバトンが手渡されるだけです。
フラットな関係でなければいけません。
露骨な言い方をすれば、先代社長は交渉相手でもあるのです。
考えてもみてください。
なんとなくの流れであったり、先代からの強制だったりで、後継者の方が会社を継がされたとします。
それが借金まみれで大赤字の会社だったらどうですか。
言い訳しようが、先代の責任を批判しようが、債権者には通用しません。
後継者が処理しなければなりません。
ときに事業継承が原因で人生を狂わされるのです。
ならば自分で自分の身を守らなければなりませんよね。
こんな場面まで想定するならば、継ぎ方に注意するはずです。
そして、自分が損を押し付けられないように、先代と交渉することだって当たり前だとおもいませんか。
事業継承というものは、事業継承ではなく、М&Aみたいなものだと考えたほうがいいのでしょう。
そして実際に、必要あればお金を出して会社を買い取るべきだとも思います。
本当に欲しい会社ならばそこまでするはずです。
投資として、出したお金以上のリターンを手にすればいいのですから。
こんな、こちらから仕掛けるぐらいの積極的な姿勢を持ってくださいと、僕は今回の後継者さんに伝え他かったのです。
先代からこぼれ落ちるのを待っていては、時間やモチベーションなどの後継者さんの大切な資源を失ってしまいかねません。
事業継承だろうが創造性が必要なのです。
そのために起業家精神を持つべきです。
親の会社をそのまま受け継いだとしたって、自分のやり方に変えていかなければいけません。
仮に今うまくいっていたとしても、それは先代のやり方です。
騎手が変われば、自分の乗り方を創造しなければいつかボロが出るはずです。
さらに今のご時世、ビジネスモデルが古びている場合が多々あります。
商売のリモデルが必要な場合だってあるでしょう。
ただ継ぐだけでなく、そこに新たな価値を創造しなければいけないのです。
ただそのまま継げばいいというマインドに、NOです。
後継者の方は、自分の会社、自分の経営を創造していく気概を持ってください。