会社は短命
「会社は永遠の命を持つ」
この言葉は、ある意味で正しいけれど、
リアルじゃありません。
理屈の上では永遠の命を持ち得ます。
しかし、ほとんどの会社の命は有限です。
事実、平均したら、
人間一人の命の長さよりも
会社の命はずっと短いでしょう。
きれいごとは抜きにして
現実に目を向けることからはじめましょう。
(楽しくはないですが)
会社は死ぬのです。
その要因はなんでしょうか。
経済環境の変化など様々なものがある中で、
社長が経営者としてパフォーマンスを発揮できる時間が
有限だという問題もあるはずです。
そしてもうひとつ、
事業承継なんてそうそう成立しないということです。
社長の現役時代には終わりがあって、
後継者は社長の技術等を引き継げない。
会社に終わりが来るのも当然ですね。
社長の持っているものはそうそう継げない
社長の持っていたものを承継することは
困難なのです。
承継できないことの方がずっと多いもの。
例えば、美味しいと評判の飲食店があったとします。
たとえ息子が店を継いだところで、
その味まで承継できないことがほとんどでしょう。
同様に、味だけじゃなくて、
仕事のやり方や持っているオーラ、人脈、経験値・・・
と継げないものだらけなのです。
継げるもののほうが少ないと思ったほうが
あっているのです。
それこそ、仕組みを継ぐというよりも、
アスリートやアーティストの技を継ごうとしていると
思ったほうが近いのかもしれません。
なんといっても、中小零細企業なのですから。
誰がやってもある程度のパフォーマンスが発揮されるまで
仕組化された大企業とは違います。
大企業と同じレベルで
中小零細企業の事業承継を語てはいけません。
この点、世の中で語られる事業承継は
なんと能天気なことか。
後継者がいればどうにかなるというレベルです。
そして継がせさえすれば、
オールOKと言わんがばかり。
または、税金などの従たる議論に終始するか・・・
会社を下手に継いだばかりに、
地獄に落された後継者だってたくさんいることに
どれほど想像力を働かせているのか。
事業承継の支援者を名乗る人間は
もっと考えて欲しいものです。
例外=事業承継 原則=廃業
これまでの、会社は承継されるものという常識は
もう改めるべきでしょう。
経済環境も変わったのだからなおさらです。
会社が承継されるのは例外。
廃業こそが小さな会社の出口の原則と考えましょう。
そうなればとるべき戦略も変わるはず。
普通が廃業なのです。
小さな会社では社長がすべて。
その社長が広げた風呂敷を、自分で畳む。
ある意味自然なことではないでしょうか。
すると、他者に迷惑をかけないで、
責任をもって廃業できる準備をするようになるでしょう。
「廃業させたらもったいないじゃないか」
という反論もあるかもしれません。
僕は承継してはダメだと言っているのではありません。
廃業をベースとしたうえで、
継がせられる部分があれば継がせればいいと思うのです。
利権や資源など、
ただ無くすにはもったいない部分だってあるはず。
その部分は引き継げるように努力すればいい。
結果、会社の一部だけが残ることもあれば、
まるまるすべてを承継されることもあるでしょう。
実現したいのは、社長のスタンスの変化です。
会社を誰かに継がせるという前提で、
なんの準備もしなかったのがこれまでのスタンダードならば、
誰も継がないことを前提とした準備をしておくのが
新しいスタンダードになるのです。
現実に対応するという面では、
後者のほうがメリットがあるはずです。
そう、現実との対話なのです。
廃業こそがスタンダードなどと主張したら、
後ろ向きだと批判されるかもしれません。
でも僕には、「何でもかんでも承継だ!」
と叫んでいるよりも現実的だと思えてなりません。
と、ここまで論じてみましたが、
いかがでしょうか。
社長さんとしては、
「考えたくない面倒な話を聞かされた」
という感想かもしれません。
でも、この記事が少しでも役にたつ方がいればと
願うのです。