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事業承継に関連する遺産分割対策の方法は?

目次

遺産分割で相続財産を分ける

お亡くなりになった社長が持っていた資産等を
相続人間で分ける行為を『遺産分割』を言います。

遺産分割には制限時間がありません。

ただし、遺産分割が終わらないと税制的な
不利益を受けることがあります。

 

相続人全員の同意が必要

遺産分割は、相続人全員の合意により成立します。

一人でも相続人が欠けている状態で遺産分割の協議をしても、
その合意は無効です。

そのため、自分の意思で押印できない未成年者や認知症の方、
行方不明の方などが相続人の中にいる場合は、
特別な手続きをしなければいけなくなります。

 

全員の合意が必要なので、
逆に「みんながそれでいいと言えば成立する」ことになります。

たとえば、民法には法定相続分が定められていますが、
この割合を無視する内容で合意したっていいのです。

法定相続分は目安を定めたものであり、
当事者間で合意できないときのものさしと
考えればいいのかもしれません。

 

全部の財産等に協議をする

相続は資産だけでなく、負債や保証まで承継します。

社長の場合は自社の株式を持っているかもしれません。

もし遺産分割協議の対象外になっていた資産等があれば、
その部分についてはまだ遺産分割が終わっていないことになります。

遺産分割を終えた後、新たな相続財産が見つかった場合は
再び協議をしなければなりません。

実務上では、こうした面倒を防ぐために、
「新たに見つかった財産があった場合は長男が引き継ぐ」
のような文言を遺産分割に加えて置く場合があります。

 

遺産をもらわなかった相続人と相続放棄の違い

よく遺産分割で何ももらわなかった方が
「私は相続放棄しました」と言っているのをお聞きします。

しかし、これは間違ってます。

相続人として遺産分割協議に参加し、
何も財産をもらわないで協議書に押印だけ押す。

この方は遺産をもらわなかっただけであり、
相続人であることに違いはありません。

 

一方の相続放棄というのは「相続しない」と
家庭裁判所に申し出ることで実現するものです。

その人は最初から相続人ではなかったことになります。

 

同じように見えるかもしれませんが、このふたつは違います。

相続人であるということは、権利だけでなく義務も承継します。

仮に資産はもらわなくても、
相続人である限り借金や連帯保証などの義務を
連帯して負う必要が出てくるのです。

相続放棄ならば、
最初から相続人ではないのでそんな義務とも無縁です。

社長の相続の場合、個人保証を負って亡くなっている場合があるので
注意しておいていただきたいところです。。

 

上手な遺産分割のための留意点

遺産分割をスムーズにクリアするためのポイントは何か?

そして、遺産分割後にトラブルにならないためには?

 

後継者が涙を飲まないように

社長の相続特有の問題です。

社長が自社の株式を持ったまま亡くなり、
その株式がそれなりの評価になるとしましょう。

すると法定相続分に照らし合わせると、
バランスを欠く場合が出てきます。

たとえば、後継者である子は株式しかもらえず、
他の相続人が不動産や定期預金などのめぼしい財産を
承継してしまうような場合です。

小さな会社の株式は一般的には価値があるものではないので、
後継者としては割に合わないと思うでしょう。

 

持ち分で相続するのは避ける

相続人として子供が3人いて、
「すべての財産を3分の1ずつ保有する」
という遺産分割をすることは可能です。

しかし、オススメはしません。

問題を先送りするだけです。

一つのものにたいして一人の所有者になるように
分割すべきでしょう。

「子供たちが仲良くするために共有で持たせる」
と言っていた社長がかつていましたが、
面倒を押し付け、
仲たがいするリスクを高めてしまっているかもしれません。

会社の株式だって同じです。

「株式を相続人間で案分しよう」となれば、経営の安定を損ない、
トラブルの素となってしまうのです。

経営を知らない株主が口を出してきて
話がこじれているケースの相談を受けたことは何度もあります。

 

現物分割、代償分割、換価分割を駆使

遺産分割では、遺産をそのまま振り分けて相続することができます。

たとえば
「神戸のマンションは長男、東京の戸建ては長女が相続する」
という場合です。(現物分割)

これに対して、お金で調整したり(代償分割)、
現金化して分けること(換価分割)もできます。

相続財産として自宅しかなかったときに、
長男が自宅の所有権を相続する代わりに、
金銭を他の兄弟に支払ったり。

または、自宅を他者に売ってしまい、
残ったお金を相続人で分けることもできるのです。

 

コーディネーターを立てる

一般の方が遺産分割に臨むと、
感情的になって傷つけあったり、
最悪の場合、協議が紛糾してしまいやすいところです。

まず、法律や実務上の定石が分かっていないのに
やり取りをはじめてしまうことで、
話がおかしくなりがちです。

しかも、人の死という特別な状況で、
普段だったらぐっと堪えれるようなことを口走ったりも。

互いの過去をほじくり返して、
人格攻撃を開始してしまう場合などはその最たるものでしょう。

また、普段はしないお金の話を身内ですることになるので、
ザラザラしたものを感じることもあるはずです。

そんな摩擦をさけるためにもコーディネータを立てて
交通整備をしてもらうといいと思います。

なお、弁護士は依頼人の利益を向上させるための役割なので、
私がイメージしているコーディネーターとは違います。

 

ほどほどマインドを大切に

経験上、相続人が法律や数字ばかりに
目が行き出したら危ないです。

遺産分割が紛糾しやすい前兆でしょう。

みんなが譲り合って、ほどほどのところで納得するのが
遺産分割のクリアに大切な姿勢です。

そもそも法律通りで、完全に平等な分け方なんてできません。

また法律が正しいわけでもないのです。

これまでの実情や故人や相続人の背景にはいろいろありますから。

意固地になって何年も遺産分割を続けたり。

お互いがゆずらないために弁護士を雇い、
結果的にその費用のほうが高くついたり。

「だったら最初から歩み寄って
話を終わらせてしまったほうが良かったのでは?」
と思われるケースは多いものです。

小さなところにこだわったり、
ごねてもそんなに結果は変わらないことが多いでしょう。

 

→ 社長の相続対策・遺言作成支援

 

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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は1000社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられた神戸に住むコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』
ゴールを見すえる社長のための会【着地戦略会】主宰

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