先代社長の個人保証の問題
次の難敵は個人保証の問題です。
先代が社長の座と株式を後継者に譲っても個人保証が残る限り、
リスクと切り離してもらえません。
会社に対する権限は手放したのに、
責任だけが取り残された状況です。
もしそのまま業績が悪化してしまったら・・・
先代社長にまで銀行から追及が及びます。
なかなか切り離せない個人保証・・・
やっかいな個人保証ですが、今のところこの問題を
一発で解決してくれる技がありません。
法的な視点から見ると、
銀行には個人保証を解除する義務はありません。
「経営者保証に関するガイドライン」が作れられましたが、
法的な強制力は持ちません。
債権回収の実現という彼らの都合を考えれば、
わざわざそれを弱める必要はないのです。
後継者に社長が代わったからといって、
その者の経営手腕は未知数です。
またいざという時の財力もなければ、
担保として差し出せる資産も持っていないのが普通です。
ならば先代社長に足かせを付けておきたい
というのが本音でしょう。
個人保証に抗う
ちまたに出回っている本では
「そうならないように借金は返してしまいましょう」
と書かれているものもありますが、
それができれば苦労しません。
そんな余裕のある会社はそうそうないのです。
問題の解決は簡単ではありません。
だからといってはなから諦めてはいけません。
打てる手を考えてみましょう。
①とにかく粘り強く交渉
銀行に個人保証を外してくれと
交渉を持ち掛けていけないわけではありません。
自由を勝ち取るために粘り強く交渉し続けましょう。
世の中の流れとしては追い風が吹いています。
「第三者への連帯保証はできるだけ控えるように」と
ガイドラインによるお上からの指導があります。
また、従来のように融資を担保力ではなく、
稼ぎ出せる利益をものさしに検討する時代にもなっています。
ガイドラインでは
「信用力がある場合、金融機関は個人保証を外すべき」
という指導をしています。
そしてどのような場合に信用力があるのかについては、
次のような点をあげています。
①法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている
②法人が支払う経営者への役員報酬や賞与等がが、
社会通念上適切な範囲を超えない
③法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断しえる
④法人から適時適切に財務情報等が提供されている
当たり前と言えば当たり前の内容ですが、
銀行との交渉にあたるには、
このあたりのポイントを押さえておく必要があるのでしょう。
②借り換え
他の銀行から融資をしてもらい、
個人保証を外してくれない銀行の借入を返済してしまうのも手です。
もちろん、会社に対して銀行が
「ここならば融資をしてもいい」
と思ってくれるぐらいの力があることが条件にはなります。
近年では融資を貸し出せる会社が減っているので、
銀行としてもいいチャンスと考えてくれるかもしれません。
③資産を持たない
会社が傾いたときに、
先代社長が資産をもっているから
返済を肩代わりしなければいけません。
逆に資産を持っていなければ、
銀行としてはあきらめざるを得ないのです。
払えるものはないと開き直れますから。
そこで、あらかじめ資産を持たないようにしておく
という戦略も考えられます。
たとえば自宅などを買い取ってもらって
他人の名義にしておくなどが代表例でしょう。