「ウチの会社なんて誰も継がないよ」と、事業継承をあきらめる声が社長から聞かれます。
その理由には主に財務内容の悪さと、ビジネスモデルの老朽化の問題があるのでしょう。
借金が膨らんでいるといった財務内容の問題が前者。
もう一つが、頑張っても利益が残らない。
売上が下がって止まらないといった営業上の問題が後者です。
今回はそんな前者の「財務内容の悪さによって事業継承を進められない」というケースを取り上げます。
よく会社の売買(いわゆるM&A)のときに、「借金が大きすぎて買えない(売れない)」という話がなされているときがあります。
でも、私に言わせれば必ずしも借金ごと引き受ける必要はありません。
極端な話、借金は一切引き継がず、事業や資産だけを譲渡するようなことだってできるのです。
М&Aの場面の話をしましたが、実は事業継承の場面でもこの原理は応用できます。
たとえば、資産が5000万円に対し、負債が1億円あれば、単純計算でマイナス5000万円の会社ということになります。
これを連帯保証までさせて継がせるというのは非常に酷な話です。
そもそも普通ならば誰も継がないでしょう。
経済活動の通常の損得勘定では、完全にそんな話だからです。
ただ、事業継承の場面ではそんな非常識なことが行われてしまうこともあるのですが・・・
それはさておき、普通の感覚の後継者ならばそんな状況の会社は継ぎません。
先代だって無理に押し付けるようなことはしないでしょう。
そこで、事業譲渡や会社分割の手法を使って、「継げる部分だけでも継がせる」という発想はどうでしょうか。
先の例で、本当に必要な資産とや事業だけを持ち出したところ、事業の価値が500万円となるならば、その金額だけを支払えば後継者は事業を継承できるのです。
承継する資産や負債の調整は可能です。
とにかく、返せるあてのない一億の借金をまるまる背負わされる必要はないのです。
このようなアクションについて悪いことをしているような感覚を抱く方がいるかもしれません。
もちろんズルはダメで、債権者を不当に害するようなやり方をすべきではありません。
しっかりと情報を開示し、意見を取り入れながらやりましょう。
ただし、発想の出発点としては「誰も継がなければ会社はすべてなくなってしまう」ことがあげられます。
雇用もなくなれば、培ってきた技術も失なわれてしまいます。
仕入れ先や顧客に迷惑をかけます。
そして、このようかたちで会社が終わったら債権者だって、通常回収できる貸金が減ってしまいます。
しかし、残せる事業を残す取り組みにより回収できる額を増やすことができるのです。
(というよりも、債権者の回収額を増やすような絵をかかなければいけません)
経験上、このあたりのことは、しっかりとオープンに説明すれば、銀行はわかってくれます。
これでも後継者はズルや、悪いことをしているのでしょうか。
私には、火中に飛び込んで利害関係者の利益を増幅させるヒーローに思えます。