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廃業やむを得ずから500万円で一部の事業を社員に売却

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過去の事業の失敗による多額の借金

60代後半の社長とお会いしました。

どうにもこうにも銀行への借金返済ができなくなったとのことで、憔悴しきった様子です。

奥村のところに相談に来るまでも、金策で走り回った模様です。

飲食系を中心に複数の事業を営んでいる会社です。

過去の失敗による借金が大きく残っていて、返済が資金繰りを圧迫していました。

個人の資産を会社に投入して返済に回したり、親族から借金をしてどうにかこれまで資金ショートを防いできました。

しかし、それらは抜本的改革には程遠いものでした。

単なる延命措置だったと言っても過言ではありません。

個人的な資金を使い果たし、他からお金を借りることができなくなった時点で、これ以上足掻くことはできなくなります。

状況的には会社をたたんでいく方向しかありません。

返済を猶予してもらうぐらいで復活できるレベルではありません。

社長も再建をあきらめています。

あとの論点は、そのやり方です。

任意で生産するのか、裁判所で破産手続をするか、など・・・

事業を引き継ぎたい社員を独立させる

ただし、この会社の場合、公的なインフラというべき事業もやっていました。

この事業がなくなると多大な迷惑をその施設や地域に与えてしまいます。

また、この事業の数字を細かく見ると、どうにか経営が成り立ちそうです。

会社全体としては負債が大きく、収支面でも赤字を垂れ流しています。

しかし、この事業を単体で見た場合、黒字でやっていける目途が立つのです。

丸ごと会社をたたんでしまうのは簡単ですが、価値があり求められる事業は残したいところ。

私は、この事業を引き継ぐ気がある人がいないか探しました。

そして「自分にやらせて欲しい」と手をあげる従業員を見つけました。

以後、彼が独立し、この事業を引き継ぐという方向で全体のプランを描きました。

彼は自分の会社を立ち上げました。

そして、事業を買取るために政策金融公庫から創業資金の借入を受けました。

会計士を交えて算出した事業の売買代金は500万円です。

営業権だけでなく、設備やスタッフ、敷金などもまとめて引き継げます。

計画では5年もあれば投資資金を回収できそうです。

おかげで一部ではあるものの、事業を残すことでお客さん等への損害を回避し、雇用も継続させられました。

元の会社としても、事業を換金化することができました。

普通にやれば、撤去費用や損害賠償でマイナスが発生することと比べれば、大きなメリットです。

このお金を使って、破産等の予算を作ることができました。

商売に関係ない人を巻き込まい

元社員への会社に事業譲渡をしたのちは、弁護士指導のもと破産手続へと進みました。

弁護士とは前もって打合せを重ね、事業譲渡後、スムーズに法的処理ができるようにプランを共有してきました。

元社員としては思いがけぬ独立でしたが、大変な中にやりがいを感じて仕事ができているようです。

社長としては気落ちする部分もあったでしょうが、「一部であれ自分がやってきたことを残せてうれしい」としんみりと語っていました。

最後に、今回心を痛めたのは、親族との関係でした。

たとえ親族からの借金だろうと、社長は優先して返すわけにはいけません。

債権者は平等に扱わなければいけなないというのが法的なルールです。

しかし、一般人である親族にそういった法律論は通じません。

そして「信じていたから貸したのに」とお金を返せない相手を責めます。

銀行等のビジネス上の付き合いではない相手の場合、破産したからといって関係を終えられません。

あらかじめそういった相手まで巻き込まないように、心掛けておくべきなのでしょう。

そもそも、身内にまでお金を出してもらわないといけなくなった場合、それは返済できない借金となっているケースが多いものです。

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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は1000社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられた神戸に住むコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』
ゴールを見すえる社長のための会【着地戦略会】主宰

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