M&Aに挑戦していた兵庫県のお客様の会社で、無事クロージング(代金決済など)を迎えました。
ちなみに私は神戸に自宅があるものの、県内のお客さんはさほど多くありません。
今から借金までして投資するのも・・・
一般ユーザー向けの日常サービスを提供する会社でした。
従業員は正社員が40名ほどです。
社長さんはまだ50代半ばです。
「この先、会社をどうしよう?」と相談いただいたことからはじまりました。
堅実経営でやってきて、借金もありません。
しかし、この先の経営には頭を悩ませます。
ひとつは資金力の問題です。
今後もやっていける事業を作ろうとするならば、ドンと大きな投資をしたいところです。
しかし、自分がその借金を負うと考えると逃げ腰になってしまいます。
また、後継者の問題があります。
自分には子供がいないし、従業員の中にも適任者は見当たりません。
投資をしないとジリ貧。
しかし投資をしたら今度は借金で、自分の引退や後継者の問題が難しくなってしまう。
こんな板挟みの状況に苦悩していたのです。
M&Aで資金力のある相手に委ねよう
数か月社長と私は協議を重ね、M&Aで会社を売却する決定をしました。
大手の傘下に入ることでより今の会社をより発展させてもらいたい、と考えました。
私と会う前から、社長のところにはたくさんのM&A業者から営業がかけられていました。
DMを見せてもらったことがありましたが、まあすごい量です。
でも、社長はいきなりM&A業者に声をかけるのではなく、奥村に相談をもちかけました。
なぜでしょうか。
「どんなやり方があるか、どの会社を使うのがいいかなど、幅広く相談できそうだったから」
「M&A業者は自社の利益だけを考えそうで信じられなかった」
こんな理由だったそうです。
いわば、純粋な参謀役が欲しかったということですね。
M&Aに動くという方針が決まったところで、諸条件を詰めました。
たとえば「1年間で満足いく結果が出なかったら方針を転換する」などです。
上手くいくケースばかりではないので、いろんな状況を想定しておかなければいけません。
M&A業者を選定
さらに、私のほうで何社かM&A業者にアプローチし、最も合っていそうなところを社長に推薦しました。
2、3社に絞ったうえで、直接社長にプレゼンをしてもらってもよかったのですが、「奥村さんが一番よさそうだと思う会社でいきましょう」とのことで、私が推させていただきました。
奥村がM&Aのアドバイザーとして相手探しや折衝はしないのか、と疑問を持たれた方がいらっしゃるかもしれません。
やらないわけではありませんし、実績もあります。
ただ、最近は仕事が手一杯になっている傾向もあり、このように他社を活用させていただくことが増えました。
会社の規模が大きいときはなおさらです。
自分がアドバイザーとして動くのは、小さな会社で適任のアドバイザーがなかなか見つからない場合や、話の拝啓が難しい事業譲渡などの場合が多くなっています。
M&A業者が決まったところで、後はそちらに任せて私は顧問を降りたほうがいいかと思いました。
しかし、そんな話を社長にしたところ「最後まで一緒にいてほしい」というありがたい言葉をいただきました。
そのため、以後のM&A業者さんとの打ち合わせや、買い手のトップとの面談などにも同席しています。
社長の知恵袋的なポジションです。
社長の知恵袋としてサポート
結論としては、奥村がいる意味はかなりあったように感じました。
社長さんからは頻繁に相談がありました。
「M&A業者は○○って言っていたけど、どんな意味?」とか。
「あまり納得いかなかったけど、仕方ないの?」と。
裏で説明のフォローをしたり、時には私がM&A業者におかしいと伝えたこともありました。
一般的に、交渉が進めば進むほど売り手は精神的にきつくなってきます。
交渉相手が絞られ「この話がなくなったら」どうしようと不安になります。
M&A業者も、話をまとめるために買い手に肩入れしようとする傾向が現れることがよくあります。
私のような立場の人間がそばにいることの心強さは、間違いなくあったと思います。
何とか成約へ
今回の件では、話が二転三転しました。
何度も交渉決裂を覚悟したものです。
特に大きかったのは、買い手が基本合意後に買値を下げてきたことです。
当初、新型コロナによる売上減少の影響は、売買価格に反映しないという約束がありました。
そのうえで基本合意書を締結しました。
ところが買い手はその約束を反故するようなことを後になって言い出したのです。
こちらとしては当然受け入れることができず、必死で抗議をしました。
M&A業者も粘り強く対応してくれたおかげで、最後は売り手の社長としても満足がいく数字で折り合いがつきました。
本当に冷や冷やしました。
1年近く社長さんと二人三脚でやってきたので、仕事が終わってしまう寂しさが少しありました。
でもとにかく、社長さんを無事にゴールまでお連れできて本当によかったです。