「あいつは、全然俺に相談も提案もしてこない。
本当に会社を継ぐ気があるのか。
やる気が見えなくてイライラしてくる」
とある会社の60代の社長さんはこんな胸の内を吐き出しました。
あまり頭ごなしに「あれをしろ、これをしろ」と言ってはいけないということを、自分で自分に戒めていらっしゃいます。
この点は正しいと思いますし、それを実践できていて素晴らしいです。
ただ待てど、相手は答えてくれない・・・と。
じれったいでしょうね。
イライラする気持ちはわかります。
奥村がこれまで受けた相談の中にも、社内にいる子供や従業員の後継者候補に対して、先代社長が業を煮やしていたケースは何度もありました。
社長は、次の社長になるんだから自発的に準備をはじめて当然だと語りました。
しかし、自分の常識は他者の常識ではありません。
相手もそうだという思い込みは危険です。
そんなお話をしつつ、奥村はある点が気になって質問させていただきました。
「社長は、次の社長が息子さんだということをどうやって伝えたんですか?」
社長は少し驚いた顔をしました。
そして、モゴモゴと言います。
「いや、なにも、特別なことは。
関係からすれば当たり前で、本人だって分かっているはずだし・・・」
なるほど、やっぱりでした。
社長は、息子さんが次の社長だということを自覚している、という前提で話をしていました。
しかし、しっかりその意思を確認したことはありません。
そうなると息子さんのほうはどう考えているか分かりません。
たとえば、うっすら会社を継ぐことになるとは思っていても、正式に言われたわけではないので、どうふるまうべきか迷っているかもしれません。
また、正式に社長から「会社を継いでくれ」と言われたり、自ら「会社を継ぐ」と約束しているか否かで、本人のモチベーションだって大いに変わるはずです。
話を聞いてみなければ実際のところはわかりません。
それでも社長が一方的に「あいつは後継ぎなんだから・・・」と決めつけて、それに対して物足りなさを感じていた可能性はあります。
「たしかに、そうだったかも」
奥村からのフィードバックを受けた社長は、後継者候補とのコミュニケーション不足に気づきました。
そして、一度じっくり息子さんと会社の継承について話をすることを約束してくれました。
対話の中で気づきを得て、行動を変える。
コーチングらしい成果が表れたセッションでした。
→『お悩み解決コーチング』