オーナーの一族が代々経営してきた、
ある食品関係の会社の社長からの事業承継のご相談です。
同社は、本社や倉庫などの不動産を所有しています。
本業とは関係のないアパートも所有しています。
借金はあまりないため、会社の株価は高額になる様子でした。
会社には二人の後継者候補がいます。
一人は、現会長の息子。
オーナー一族の人間ですね。
もう一人は、オーナーとは血縁のない経営幹部。
はたして、どちらが後継者にふさわしいでしょうか？
息子と経営幹部、二人の後継者候補
現会長の息子が承継する場合、
相続の流れで息子に会社の株式を集めることは、
税金の問題は残るものの比較的容易です。
オーナーの一族としても、
親族外の人間が社長になるような抵抗感がありません。
しかし、彼の経営者としての力量が未知数です。
経験も浅く、正直なところ、
リーダシップに不安があると社長は考えていました。
会社の資産状況はまだ良いものの、
外部環境の変化もあり事業運営は簡単ではありません。
そんな難しい時代に、はたして
「先代の息子だから」で、
後継者を選んでいいのだろうか・・・。
社長は悩みます。
では、もう一人の候補者である、経営幹部はいかがでしょうか。
長年経験を積み能力も高く、社員からの人望も厚いとのこと。
「社長を任せても間違いはないだろう」
社長はこう思っています。
しかし「会社の株式をいかに渡すか」の点に問題があります。
株式は高額となるため、
勤め人だった経営幹部には
その株を買い取れるような資金はありません。
一族以外の人間に会社を譲ることに少々ためらいもあるようです。
ならば、株式を持たない「雇われ社長」では？
と考えるところですが、
その立場は難しいものがあります。
いつ首を切られるか分からない立場で、
個人保証などの責任だけを背負うことは酷です。
本人としても覚悟ができず、
パフォーマンスを発揮できなくなるかもしれません。
オーナー一族以外の人間に社長の権限を委譲することに対し、
周囲の理解を得ることが簡単ではない雰囲気もあります。
後継者は、会長の息子か、それとも経営幹部か？
どちらにも一長一短あって、難しいところです。
【問題の所在】
■ 会長の息子（オーナー一族）の後継者候補者の経営能力が未知数
■ 経営幹部への承継の場合、 株式の買取りのための資金調達が困難
■ オーナー一族の財産を他人に人間に預けることへの抵抗感
資産と事業で分社して承継
こんな局面につき、奥村からの提案はこのようなものでした。
「会社を資産管理会社と事業会社に分けましょう」
資産を保有するための会社と、事業を行うための会社。
会社を目的によって分けることで、
今回の事情に適した事業承継が実現できると考えました。
まず、資産管理会社には、不動産などの資産を保有させます。
そして、この会社の社長には会長の息子が着きます。
「会社＝資産」という意味を持ち、
ある意味でオーナー一族の「所有物」として
扱ってよい会社だと考えたためです。。
なので血筋で後継者を選んでもかまいません。
なお今回は、本業に関係ない収益アパートなども所有していたため、
不動産を事業と別にする意味合いもあります。
もう一方の事業会社は、
本業の事業とそれを担う雇用等を引き受けます。
ストックのための資産管理会社に対し、
事業によるフローのための会社です。
上手くやり繰りしながら生き抜いていくことが求められるため、
社長の経営能力は欠かせません。
今回ならば、経営幹部の方が社長に就任してもらのがいいでしょう。
これからは資産管理会社に本社や倉庫などの利用料を払いながら、
事業を継続していくことになるのです。
この提案では、大きな不動産資産がオーナー一族の手元に残ったため、
一族からの了解も無事に得ることができました。
また、事業会社は大きな資産を保有しなくなったため株価が小さくなり、
事業会社の社長となる経営幹部でも株式を買い取ることができたのです。
【解決のポイント】
■ 分社化の手法を使い、
それぞれの後継者に合わせた会社を作って承継させた
■ オーナー一族の会社に対する所有意識と、
株式の買取り資金の問題もクリア
※事業承継などについて詳しくは、
奥村の運営する下記サイトも参考にしてくだされば。
★★関連サイトのご紹介★★
会社分割ドットコム
分社手法の活用で事業承継や会社再生、
組織変更を切り抜ける方法
事業承継・廃業相談室
社長交代や相続、後継者育成など
中小企業の出口戦略の本当のところを
ひょうごエンジン
奥村が手掛ける地域活動。
空き家のリノベーションや地域おこしのプロジェクト
