奈良県で墓石販売を行っていた会社の事業承継支援実例を、先代社長の声を交えてご紹介いたします。
川村さんはこの度社長を退任し、経営の一線から身を引きました。
この機会に会社の95周年記念も兼ねたイベントを企画。
お客様を招きし、川村さんと奥村で引退記念対談もさせていただきました。
ありがたい。
私のようにお客様にまできていただいて、48年間社長としてやってきたことをふり返らせてもらって、仕事への想いをお話できて……
普通あることじゃない。
本当に、ありがたい。
イベントが終わった直後の川村さんの感想です。
最後の挨拶場面で感極まって号泣されていたことが印象的でした。
川村さんとの出会いは6年前になります。
うちは廃業したほうがいいかもしれない。
売り上げが下がり、資金繰りに苦しむようになった。
会社を継がせるような後継者もいない。
であれば、今のうちにたたんだほうがいいかも・・・
奥村に相談をもちかけた動機は、廃業するか否かの悩み相談と、廃業をするのだったらどうやってやればいいかを知りたかったからなのです。
私にとって廃業の指導は得意中の得意なものです。
でも、この会社においてはまだ廃業じゃない、と感じました。
当時の川村さんご夫婦はまだ60前後と若く勉強熱心。
従業員さんも全体的に若い。
顧客と会社の関係も良い。
(社長の引退記念イベントに一般のお客さんがたくさん集まることがその証明です)
私は「もう一度事業の立て直しに挑戦してみませんか」と提案しました。
半信半疑だけど奥村さんにかけてみよう。
とことんやってみよう。
その結果が4年後、5年後に返ってきました。
当然そんなにすぐに結果が出るものではない。
コンサルティングの依頼を決めたときは、こんな心境だったそうです。
私たちは一緒に事業づくりに取り組み、新サービスなどの成果もあって会社の収支は改善されました。
そうこうしている間に、未来の後継者となる娘婿さんが会社に入社。
廃業目前だった会社が、経営を立て直し、後継者にも恵まれ、ついに会社をバトンタッチして自らは勇退・・・
ちょっと出来過ぎではないか思うような展開となりました。
コンサルティングで私が最初に取り組んだことは、『自分たちの仕事の定義』を作ることです。
それまでは、なんとなくこれまでの流れでお墓を売っている、という状況でした。
それでは軸足が定まらずに力が入りません。
「私たちはお墓と供養の先生になる」という方向性が見えたときに、未来への手ごたえを感じました。
自分たちの目指す方向が見えたら次は、何ができるか、何をすべきかを考えました。
そこから、
価値観を伝えるためのホームページや顧客通信の作成
永代供養墓の企画・運営
墓じまいサービスの新設・・・
といった取り組みが生まれ、成果を生んでいきました。
会社を立て直そうとするとき、儲かりそうなものを探してきてとりあえず手を付けるというスタンスでは、まず上手くいきません。
先に自社の軸をさだめ、そこから具体的な行動を導き出すべきです。
何に取り組むか、何を自社の軸にするかについては、社内にあるものを活かす意識を貫きました。
社内、その中でも特に社長である川村さんが持つ強みです。
川村さんは、お墓や供養に対して非常に詳しく、愛がある。
お客さまへのホスピタリティも厚い。
「この人ならばお墓と供養の問題は何でも解決できる」と信じられるものがありました。
その強みを活かすためにどうしたらいいかを考えたら、必然的にこうなった、という感じです。
事業承継の支援と一言でいっても、必要なテーマは各社で全く異なります。
その中で、川村さんの会社については事業のバージョンアップ支援に注力した事例でした。
最後に聞いてみました。
「もしあのとき廃業していたら?」
楽にはなっただろうけど、やっぱり悔いは残ったと思います。
最初は良い廃業の仕方を教えてもらおうとしたけど、奥村さんに方向付けをしてもらえました。
試金石になってくた。
先祖のお墓の前で「なんでこんな店残したんだ」と嘆いていましたが、このところはようやく「会社良くなったよ」「ありがとう」と言えるようになりました。(笑)
ふり返ってみると、ここまでこれたのは奇跡のようです。
川村さんは、自らの身の引き方でも、素敵な姿を見せてくれました。
「まだ早いのでは」という声もよそに、自らの信念にしがたい、潔く、さわやかに会社を去りました。
別の新しいことにチャレンジしていきたい、とのことです。
川村さん、おめでとうございます。
そして、長い間の社長生活、お疲れさまでした。