中小企業の社長でも、一般の人と同じように『住宅ローン』を組んでいる人がいることでしょう。
またこれから組もうとしている方もいるはずです。
あなたはどこに着目して住宅ローンを組みますか?
金利は? 固定か変動か? 返済年数は?・・・
お決まりの論点はいろいろあることでしょう。
でも、もっぱら社長の退任と会社の終焉を支援してきた奥村は、目の付け所がちょっと異なります。
私が問いたいのは、どこの金融機関で住宅ローンを組むか?です。
端的に結論を言えば、会社で借金をしている銀行から個人の自宅の住宅ローンまで借りないほうがいい、ということです。
えー!?と思われた方も多いのではないでしょうか。
現に、自社で付き合いのある銀行から住宅ローンを組んでいる社長はたくさんいます。
たとえば、会社のメイン銀行で自宅の住宅ローンを組むケースを考えてみましょう。
すでに付き合いがあるので、たしかに住宅ローンは組みやすいかもしれません。
また、メイン銀行のビジネスにも協力してあげられるので、媚びを売ることもできます。
ときには「住宅ローンはうちで組んでください。最大限金利のほうも融通をきかせますから」と、先方からオファーを受けることもあるかもしれません。
関係がいいときは、何の問題も無いのです。
目先の利益を考えたら、会社で取引のある銀行で住宅ローンも組んだほうがよかったりします。
しかし、会社の置かれている状況が変わればすべて一変してしまいます。
ここに業績不振で借金が大きくなって、資金繰りが厳しくなった会社がありました。
すでにリスケ中のため、新たな融資は引き出せそうにありません。
社長は自宅を売却することを決意しました。
自宅の価値は、時価相当で約3500万円。
ただし、住宅ローンの残金が500万円残っていて、もちろん抵当権も付いています。
自宅を売るためには抵当権を消すことが必須ですが、自宅の売却代金から500万円を住宅ローンの返済に充てれば消すことができます。
ということは自宅を売れば、住宅ローンを返済しても、社長は3000万円を手元に残すことができます。
これだけあれば生活費に余裕ができ、生活再建の足掛かりを作れるでしょう。
ところが住宅ローンを、会社でも借金をしているA銀行で組んでしまっていたのです。
自宅を売却するためにはA銀行の協力が必要です。
抵当権を消してもらわなければいけません。
しかし、A銀行は単純に抵当権抹消に応じてはくれず、協力するための条件を突き付けてきました。
「抵当権を消すには、自宅の売却代金の残金をすべて、会社の借金の返済に回すことが条件だ!」と。
社長はA銀行に「会社に運転資金が必要だから、自宅の売却代金を全額返済に充当するのは勘弁してほしい」と懇願。
最終的には3000万円のうち、2000万円を返済に充て、残りの1000万円だけが社長の手元に残されることで落としどころとなりました。
本来なら3000万円の現金を手にできていたのだから、実に悔しい話です。
自社で付き合いのある銀行で住宅ローンを組んだことに起因する厄介ごとは他のケースでもいろいろありました。
これでも住宅ローンを、会社で借入のある銀行で組んだほうがいいと思いますか。
おそらく、ここまで先に潜んでいるリスクを見ていた方は少ないと思います。
でもあなたは、今、知りました。
さてこれからどうしますか?
危機管理に対するセンスの問題だったりします。
「自分に限ってそんな状況に陥ることはありえない」とこの問題を考えることをやめる人と、「念には念を」と行動を変える人。
後者の人のほうが、とても少ないのだと感じています。