問題の所在』
■ 後継者が親族外の場合、社長に万が一が起こっても、
後継者が会社の株式を相続で手に入れることができない
■ 社長の家族は、相続で会社の個人保証を相続するリスクがある
■ 社長の家族が相続放棄をした場合、
プラスの財産まで承継できなくなる
血縁のない社員に会社を継がせることが決まっているという、会社の社長さんから相談です。
「自分も引退を考える年になってきた。まず、何からはじめたらいいか?」とのこと。
当方からは、経営状況に合わせて社長交代のスケジュールを作って実行していくことを提案。
そして、今すぐ遺言を書いておくこともすすめました。
この会社は債務超過ではないものの、資産と借金はトントンといったところで、株価は高くありません。
社長には妻と二人の子供(男女1名ずつ)がいましたが、会社の事業にはまったくタッチしていません。
そんな背景もあって、早くから「社員のKさんを後継者にする」と社長は決めていたのです。
相談時、社長はとてもお元気でしたが、いつ、万が一のことが起こるか分かりません。
私たちは、社長に相続が発生したとき何が起こりうるかを、シミュレーションしてみました。
まず、親族が普通に社長を相続することが考えられます。
社長の個人資産は家族のものになります。
しかし、相続ではいいとこ取りすることはできないため、社長の負っている会社の借金に対する個人保証まで承継してしまいます。
会社の財務状況は微妙なため、もし会社が潰れたときには保証人(家族)に対して大きな額の請求が回ってくる恐れがあります。
ならば、「そんなリスクを負いたくない」ということで、家族は社長の相続を放棄する可能性もあります。
相続放棄さえすれば、マイナスになることはありません。
しかし一方で、相続時に社長が持っているプラスの資産まであきらめなければならなくなってしまうのです。
たとえば、社長の死後、社長名義の銀行口座に100万円残っていても、相続放棄をして相続人でなくなった後では、家族であれ手を出すことはできません。
これは惜しいのでは・・・
そしてもうひとつ、会社の株式の問題があります。
社長が死亡すると、後継者の手元に株式が自動的にやってくるわけではありません。
後継者は、株主を見つけて、その人から株式を譲ってもらう交渉をしなければならないのです。
ところが、家族が相続放棄をすることで、会社の株式を相続する人間がいなくなってしまいます。
もしこうなると、後継者は株式を手に入れるため、戸籍集めや、次順位の相続権を持つ人間との折衝、 家庭裁判所への相続財産管理人の選任手続・・・等、多大な時間と労力が必要となってしまうのです。
時期社長のKさんはとんでもない苦労を負うことになるでしょう。
これが、社長が何の備えをしないで亡くなってしまったときのシミュレーションです。
普通は避けたい結末ですね。
私たちは、遺言などの法的ツールを使って、この問題を回避する道筋を作っておくことにしました。
家族にとっては、個人保証の負担は負わないで、プラスの資産だけを承継できる道。
後継者にとっては、株式をしっかり入手することができる道です。
たしかに、社長が亡くなったときの状況によっては、この企てが完全に成功しないケースも考えられます。
しかし、そもそもアクションを起こさなければ、歓迎しない結末は確実に起こることになるのです。
中小企業の経営者は、遺言を書いて保険をかけておくべきではないでしょうか。
しかもその保険は、一度書いてしまえば毎月の積立金がいらない保険なのです。
『解決のポイント』
■ 遺言で、社長が死亡した場合に
親族外の後継者へ株式を承継させるルートを作っておく
■ 社長の親族が相続を放棄するかもしれないことを前提に、
遺言や生前贈与などを使って工夫しておく