廃業だって立派な社長業の出口
「廃業を考えているから相談したい」と
アパレルの小売業を営んでいたオーナーからありました。
病気と年齢のために視力が弱まり、
もういつまでも仕事を続けることはできない
と悩んでいたそうです。
自主的に廃業を選択するケースは増えています。
これも社長のけじめのつけ方として、
立派な選択だと思います。
廃業の流れって?
廃業の手続では、まず営業を停止します。
しかし、営業をやめたからといって、
すぐに会社が無くなるわけではありません。
会社の持っていた資産や負債が
残ったままになっているからです。。
これらを整理して片づけなければいけません。
これが「清算」です。
なお従業員さんの雇用契約が残っている場合は、
これも清算で処理する対象です。
●資産と負債の処分
資産と負債はいかに処理するか?
資産を売却などしてお金に変え、
負債の支払いにあてます。
この作業を経てお金が残れば
株主に配当して清算作業は終了。
ようやく会社を消滅させることができるようになります。
ポイントは、
資産、負債ともにゼロにならなければ清算は終わらず、
会社は存続し続けてしまうということです。
借金が廃業の壁に!?
冒頭のアパレル会社の件に話を戻します。
決算書を元に清算時のシミュレーションをしてみました。
すると廃業した際、
結構な額の借金が残ってしまいます。
上記でお話したように、
負債が残ったままでは会社を清算することができません。
この借金は銀行からの借入でした。
中小企業の社長なので銀行からの借入の際に、
個人保証をさせられています。
会社の資産で返済しきれない分は、
オーナーの個人資産を取り崩してでも、
支払う義務があるのです。
しかし社長は、残る借金を返済できるほどの
個人資産は持っていないとのこと。
困ってしまいました。
「廃業はしたい。
でも借金が残るから、やめるにやめられない」
こんなケースにハマっている会社や社長さんは、
ちまたにたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
廃業を事業譲渡で解決
こちらのアパレルの会社では、
進むにも、退却するにも難しい状況でしたが
「廃業は免れない」
との結論になりました。
借金が残る問題を避けたいがために営業を続けたところで、
それは時間稼ぎにすぎません。
しかも、こんなケースでは、
時間が経てば会社はより劣化していくもの。
打つ手がどんどん制限されていきます。
廃業は、やむを得ず。
肚が決まったところで、
やり方を検討することになりました。
僕は社長さんに
「店をそのまま引き受けてくれそうな人(会社)はいませんか?」
と質問しました。
廃業の場合、
通常は最初に営業を停止し、
それから個別の資産の換価を行うのが一般的です。
しかし、僕は資産を個別に処分するのではなく、
「店舗(=事業)としてまとめて誰かに引き継いでもらえないか」
と考えたのです。
そうすることで、個々の資産の売却をする手間が省けるし、
賃貸物件の原状回復費用などが要らなくなります。
事業を引き継いだ方が
雇用等を維持してくれる可能性も生まれます。
そして結果的に、
個別に資産を売却したときよりも
高く換金できるかもしれません。
幸いオーナーにも思い当たる相手がいました。
さっそくその人に、社長とともに直談判に行きました。
この事業を引き継げは、
すでにできている商売の仕組みが手に入ります。
自分で同じものを作ろうとすれば、
相当な時間や労力やお金がかかりますね。
それが一瞬で手に入るのですから、
悪い話ではありません。
社長さんの知人から
「是非引き継がせてもらいたい」と
回答をもらいました。
両者にとってメリットとなる絵を
描くことができました。
事業譲渡に銀行は同意してくれるの?
次に、社長さんと僕は銀行に対して廃業の打診を行いました。
事業譲渡は成立する見込みです。
結果、資産をただ換価するよりも、
多くのお金を残せます。
しかし、すべての借金を返済するまでにはいたりません。
「それでも事業譲渡を進めていいか?」
を銀行に打診したのです。
事業譲渡を進めれば、
銀行の借金の回収額が増大することを強調しました。
事業譲渡をした後、
会社は廃業するつもりであることも伝えました。
結果、銀行サイドは快くOKを出してくたのです。
廃業することを銀行に伝えるときに
反発を恐れる方が多いかもしれません。
しかし、しっかりと情報を開示して進めれば、
聞く耳をもってくれます。
そして、描いた絵がみんなにとってメリットがあるものならば、
合意してくれるのです。
銀行サイドからの合意を得て、
店舗の譲渡などを進めました。
残った借金はどうなった?
事業譲渡をしても会社の借金は残りました。
それは代位弁済により、
銀行から保証協会に移されています。
保証協会との話し合いにより、
社長は毎月無理のない可能な範囲で
少しずつ返済することになりました。
もちろん、残った借金や個人保証は、
破産等で法的に処理してしまうこともできます。
今回は、社長の意向により分割弁済を選択しています。
事業譲渡でみんなのメリットを増大
廃業に事業譲渡を組み込んだことで、
これまでやってきた事業を残すことができました。
スタッフやお客さんのメリットは増えたはずです。
また、引き継いだ事業主にとっても
美味しい話となりました。
銀行は単純に廃業されるよりも多くの借金を回収できました。
そして、社長さんは出口にたどり着き、
平穏を手にすることができたのです。
廃業も視野に入れた事業承継準備を
このケースでは、廃業と事業譲渡を活用することで幸い最悪のゴールよりもマシな落としどころに着地させることができました。
しかし、もっと早い時期から週末を見据えた取り組みができていたら、手元により多くのものを残せた可能性は高いかったのも事実です。
どうしても切羽詰まってから社長は動きはじめがちです。
しかし、早めに動き始め、時間のゆとりをもって手を打つことが利益を最大化させます。
「お金や自宅などの個人資産をできるだけ残したい」
「個人保証や相続のことで家族に迷惑をかけたくない」
「事業を誰かに残したい」
こんな希望をお持ちならば、早めにお声がけください。
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