大阪に出向いての事業承継のご相談でした。
こちらの会社は2度目のご相談。
前回は社長をしている娘さんからの相談で、
今回は会長のお父さんも交えての話し合いです。
技術系の会社です。
2年前に娘さんが社長になりましたが、
現場のことは分かりません。
もともとワンポイントであることを
想定していたのです。
そして、やっぱりうまくいかないということになり、
抜本的な事業承継を考えだしました。
後継者になるべき男性の社内従業員はいます。
しかし、会長のお父さんからすると、
自分を通さないで仕事を決めてきたりする姿勢が
面白くありません。
仕事のやり方については、
他にもいろいろ言いたいことがある様子。
思うようにやらせたいけど、
だからといって会社を継がせる以上
自分の足で動いてもらわなければ困ります。
また、自分が育ててきた会社のことは大切です。
でも、会社を譲った後まで
仕事のことで神経をすり減らしたくはない、
というのも本音のところ。
資金繰りや個人保証のリスクから解放されたいのは
当然でしょう。
社長の娘さんも、
会社名義の不動産はどうすればいいのか。
保険の引き継ぎは、従業員の待遇は・・・と、
不安や疑問が盛りだくさん。
考え出はじめたら、こんがらがってしまいます。
それゆえここまですっきり解決しなかったのでしょう。
決断できるように、頭の中を整理しなければいけません。
こんなときはまず理想のかたちを
イメージしてもらえるように誘導します。
今回だったら
「はたして新社長をコントロールすることは現実的ですか?」
質問してみたり。
会長は、会社を譲った後まで
自分の意向どおりにやらせるのは無理だと気付きます。
すかさず他社の事例や
僕の考えも補足で付け加えます。
こうして結論が見えてきました。
「どうせコントロールしきれないのならば、
もう好きなようにやらせよう。
しかし、それに伴う責任もちゃんと背負ってもらい、
会長や娘さんとの関係を切り離すこと。
また、不動産は一族のものだから、
会社とともに譲ることはしない」
これが今回の事業承継の理想の形です。
基本方針が見えたことでようやく、
具体的な取り組みを検討できます。
ここからは
理想がどれぐらい実現できるかや
必要な妥協は何かを検討しつつ、
ゴールの姿をより具体的にしていきます。
ゴールが見えたら、
後はそこに至るよりよいルートを企画します。
お客さんとやりとりしながら、
こんな感じで仕事を進めています。
取組みの順番を振り返ってみると
事業承継が進まないパターンも見えてきました。
一つは、ゴールに至るルートを
すぐ自分で考えようとすることです。
ゴールが描けていないのにルートを考えだす。
こんなちぐはぐなケースがあります。
また、十分な知識や経験がない人が、
ルートを考えてしまう場合もあります。
それは非効率だし、危険です。
ご本人の一番の役割は、
どこに行きたいかを明確にすることです。
そこに至るルートは専門家に提示させればいいのです。
もうひとつの停滞要因は
細部の問題に捉われてしまうこと。
まず、ゴールを見定め、
それから全体の流れを構築することが大切です。
現場では、まだ考えなくてもいい細かい論点の議論に
終始してしまうことがあるのです。
ご自分で勉強した枝葉の知識が
かえって邪魔になっているケースもあります。
枝葉の部分のポイントを、
さも重要なことのように語る自称専門家にも要注意ですね。
彼らの仕事にとっては重要でも、
こちらの会社からすれば二の次、
三の次の論点である場合があります。
それにしても、
事業承継の心労というのは本当に重たいようです。
70代半ばの会長は
「この先どうしたらいいか考えだしたら、
おとといは一睡もできなかった」
と語っていました。
状況を整理して、
はやく安心してもらえるようにしたいです。