「会社を継ぐ」や「会社を手に入れる」とは、どいうことなのでしょうか。形式的な意味、法律的な意味から考えてみましょう。
まず社長に就任すること
まず社長になれば会社を継いだことになると考える方は多いでしょう。事実、社長になれば会社を代表する権限を持ちます。
社長がYESと言って書面に押印でもすれば、基本的にその契約等は有効になります。たとえ社内の意思決定ができていなくても、役員の多数が反対派していようと、それは第三者である相手には通じません。
従業員レベルの仕事ならば「社長の決済がおりなかったので、今回の件はなかったことにしてください」という言い訳は通じるかもしれません。でも、社長が言ってしまったことは、そうはいきませんね。
対外的には「社長≒会社」と見られます。
代表取締役就任の登記をする
なお、社長に就任することの形式的な要件は、法務局に登記をすることです。代表取締役就任の登記をし、会社の登記簿に名が載れば形式面でも社長になったと言えます。
その登記の際に、会社の実印として利用する印鑑を法務局に登録することになっています。これが『会社印』や『代表印』と呼ばれるもので、個人でいうところの『実印』と同じ役割を果たします。
個人の実印を証明する『印鑑証明書』と同様のものが、会社の場合は法務局で発行してもらえます。
社長は株式も手に入れる
社長に就任すればそれで安心でしょうか。
そんなことはないと思います。
たとえば、株主総会で社長になったあなたの解任決議が成立したら、あなたは社長の職を失います。決議さえ可決されれば、社長を辞めさせることは一般従業員を解雇することよりもずっと簡単です。
ゆえに、中小企業で会社を継いだというためには「会社の株式も手に入れる必要がある」と言えそうです。
上場企業と異なり、普段の仕事で株式や株主を意識することはほとんどないでしょう。
しかし、法律的な仕組みは上場企業でも中小企業でも同じです。そして、会社のオーナーである株主の権限はとても強いのです。
だから社長が自ら株式も取得し、株主となってしまうのがセオリーです。身の安定を図りましょう。小さい会社だからこそなおさらです。
株式の大半を持っていればいいのか、という論点もあります。
「全ての株式を所有するのでなく、自力で決議ができるレベルの大株主になっておけば十分じゃないか」という主張です。
僕としては、この主張は否定したいところです。やはり、株式を社外の人間に持たれているとトラブルが発生するリスクを高めてしまいます。
株主がその気になれば、株主の権限を使って嫌がらせや妨害がかなりできます。株式の問題が人間関係のトラブルに発展する場合もよくありますからね。
「すべての株式を社長が持つ」が、基本スタンスになると考えます。
株式はどうやて入手するか?
上記の話をふまえ、株式をすべて後継者が持とうと決めたとします。しかし、簡単に後継者のもとに株式が集まらない場合が多々あります。
たとえば、先代が株式を後継者に贈与したら、目が飛び出るような贈与税がかかることがあります。
かといって、お金出してまで買い取るのも・・・と、思う方もおおいでしょう。
いずれにせよ、税金面を充分にケアしながら、確実に後継者に株式が手渡される道筋を作らなければなりません。そのために遺言などの法律ツールを使うこともあるでしょう。
長期戦になることもありますが、とにかく早めに手を打っておくべきです。税金の問題は、時間が私たちの味方してくれます。
後継者は代表権と、株式とを
「社長になって代表権を手に入れること」
「株式を手に入れること」
この2つがそろって、法律的に会社を手に入れたと言えることがおわかりいただけたと思います。
実務では、後継者が、「会社の借金の個人保証するように」と債権者から迫られることがあります。しかし、この記事の内容を考えれば、2点を満たせてからすべきという結論になるでしょう。
会社が完全に自分のものになったか、さもなくば、ほぼ確実に自分のものになる状況でないならば、銀行などからの要請は拒否して当然だと思います。
下手に個人保証をしてしまうと、継ぎ方の選択肢が制限されることにもなってしうのでご注意ください。どんな継ぎ方があり得るかは、こちらもお読みくだされば。
→「後継者が仕掛ける会社の革命」