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後継者が社長になるまでにしておいたほうがいいことは?

会社に入社したら、各セクションで働いて会社の仕事の全体を見えるように・・・といったよくある話ではなく、この記事ではもっと先を見据えた、後継者の社内での振る舞い方を考えてみます。

目次

自由を手放すな

後継者が成功できるか否か。一番の要素は『自由』だと思っています。

成功している後継者社長は、家業に入ってから自由にやらせてもらっていた傾向があります。逆に成功した例で、親である社長の指示通りに動いていたり、先代のせいで自由できなかったというケースは知りません。

先代が後継者に社長を譲った後になっても、いつまでも会社に口出しをしてくる・・・。これはよくあるケースですが、上手くいかない典型例でもあるわけです。

伝統工芸の救世主としてメディアにも露出の多い中川政七商店の十三代中川政七社長も「先代である父のやっていた第一事業部と、自分がやっていた第二事業部は、場所が離れていたから、報告だけしていれば、あとは好きにやれたのがよかった」と語ります。

自由だから成功するわけではありません。失敗するときは失敗します。それでも、自由にやれなければ成功することはないと考えましょう。

人の成長というものは主体的に取り組み、トライ&エラーを重ねていくことで実現できるものだと思います。自分なりにやって自分の経営スタイルを見つけるしかありません。

スタッフを切りまくってでも?

私の知人で、成功している後継者社長には、社長になる前から合わないスタッフの首を切りまくった方がいます。「自分はこんな会社を作りたい」というビジョンがあり、それに合わない人には辞めてもらったそうです。

こんな話を聞くと、ひどいとか、非人道的だとか、法律問題だ・・・と過剰に反応する方がいるかもしれません。

しかし、それでは雇用される側の視点と何ら変わりません。社会的な常識を背景に正義感をむき出すのもちょっと違う気がします。

経営者を目指す方には、自分のビジョンを実現するためにここまでアグレッシブな姿勢で取り組む後継者がいたことを知って欲しいと思います。はたして、ここまでやりきる志やエネルギーが、あなたにありますか。

「世の中にこんな価値を提供する」といった、会社が実現すべき目的や使命が核です。あとは、それを実現するためにうまくやるだけです。

スタッフの件をとっても、どんな人を集め、どんな待遇にするかは、会社の目的や使命を実現するための手段だと考えるのが経営者的発想だと思います。

事業承継だといっても、起業的なマインドは不可欠です。特に今のような世の中が変わっていくときにはそうでしょう。

先代から会社を受け継ぐだけでなく、自分のビジョンも持っていなければなりません。そのままやるだけでは、会社は劣化していく一方でしょう。

会社は受け継ぐものであるとともに、あなたが活かす対象でもあります。

いっそ自分の会社を作ってみる?

話がややそれましたが、自由がとてつもなく大切だということは、押さえておいてください。

そもそも経営の本質は自由を確保するための戦いだとも言えそうです。

顧客や取引先は自己の利益を得ようとします。反対の立場になれば、こちらの自由を奪う振る舞いです。

大きな会社になれば株主に経営の自由を制限されている場合もあるし、従業員の力が強い会社では、社長は思い通りの経営をさせてもらえないときもあります。

後継者が社長になったときに、古株の幹部社員の存在に手を焼くというのもよくある失敗パターンですが、これだって自由を奪われた状態ですね。

自由が失われればそれだけ経営的に失敗する可能性が高まります。後継者は、このことを意識しておかなければいけません。

自由はどんどん少なくなるものだから、自由を確保するようにしておきましょう。社長になる前から心がけておくべきことです。

先代社長がいてまったく自由やらせてもらえないようなケースだったら、別の新会社を設立してしまい、そちらの経営を自由にやらせてもらうというのも一手です。

たとえば製造業だったとして、販売だけを別会社にして、そちらを後継者候補の方が経営するも可能だと思います。

自分で会社を立ち上げる経験は、経営者としての成長につながるので、結構おすすめの方法だったりもします。

社長になるまで個人保証はしないこと

経営の自由を奪ってくるもののひとつに借金もあります。それを社長が連帯保証する、いわゆる『個人保証』には注意してください。

会社の借金と個人ががんじがらめにされてしまうので、社長になるまで(実質的にも形式的にも)後継者といえど個人保証をしてはいけません。たとえ銀行が求めてきたとしても、です。

継ぎ方の可能性を相当狭めてしまうことになりかねません。

採用と金庫番

精神論が多くなってしまったので、最後に具体的な話で締めくくりましょう。

社内で味方を増やし、リーダーシップを発揮できるようにするため、採用を後継者のあなたが担当してはどうでしょうか。そこで採用されたスタッフは、あなたに採用してもらったと感じることになるはずです。

また、予算の決済があなたのハンコなしでは承認されないようにするのも一案です。

お金を引き出すにはあなたのハンコが必要となると、自然と地位が高まり存在感が増してきます。予算の意義を理解して判断するといった内容面の話ではなりません。(もちろん、そこまで分かっていたほうがいいでしょう)

予算を引き出すにはあなたのハンコを押してもらわなければいけないという形式が、自然とあなたに力を与えることになります。

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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は1000社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられた神戸に住むコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』
ゴールを見すえる社長のための会【着地戦略会】主宰

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