M&Aのスピンアウト?
М&Aの分野の『スピンアウト』とは、
会社の事業などの部分を分社して独立させることです。
株式を買い手に売却してМ&Aを実現することが通常です。
しかし、わざわざ別会社を立ち上げて、
その会社を譲渡するメリットがある場合があるのです。
これを『スピンアウト取引』と呼んだりするようです。
会社分割によるスピンアウトをつかった節税を考える
スピンアウト取引を使うことで、節税ができる場合があります。
通常の株式譲渡と比較してみましょう。
通常の株式譲渡の場合
会社を売って現金を手にしたい株主が、
通常どおり所有する株式を買い手に売ります。
その際、利益に対して約20%の税金が課税されます。
たとえば、1000万円の元手ではじめた会社が
6000万円で売却できたとしたら、
前株主は5000万円の利益を得たことになります。
もちろんこの税金は前株主に課されます。
この課税は分離課税となります。
そのため節税方法があまりありません。
分離課税では他の所得とは切り離されて
税金が計算されてしまうためです。
また、この場合は買い手としても税的なメリットがありません。
株式は経費として償却できないからです。
スピンアウト取引の場合
では、事業をわざわざ分社して新会社を作り、
その子会社を売却する場合を考えてみましょう。
まず会社分割で事業を外に切り出して新会社を作ります。
新会社は旧会社の子会社になります。
そして新会社の株式を買い手に売却します。
このケースでは、売主は旧会社となります。
税金に目を向けます。
まず、旧会社には法人税として約34%の税金が課税されます。
法人税は利益に対してかけられるので、
旧会社が新会社の株式を売却して得た利益もその対象となります。
このままでは損をしてしまいます。
さきほどの株式譲渡が約20%の課税だったのに、
こちらになると約34%と税率が高くなってしまうためです。
しかし、スピンアウトの場合ならば、
他の損失や経費と合算することができます。
たとえ税率が高くても、
利益を減らすことでトータルの税金も減らせる場合があるわけです。
例えばオーナーの退職金を支払うことで経費を生んで、
株式売却による利益を相殺することも一案です。
社内にのこっている繰越欠損金と相殺することもできるでしょう。
次に、買い手のメリットも考えてみます。
今回の新会社を設立する過程において、
非適格の会社分割が行われています。
すると新会社の資産の部に資産調整勘定、
すなわち『のれん』が計上される場合があります。
例えば、簿価だと純資産が4000万円だったところ、
それを6000万円で売れたとなれば、
2000万円ののれん代が発生するのです。
のれん代は経費で償却することができます。
すなわち新会社が営業をして利益が出たとしても、
のれん代と利益を相殺できるのです。
結果、節税につながります。
※会社分割についての詳細を知りたい方は、
こちらのサイトもご覧ください。
スピンアウトで価格交渉を
このようにスピンアウトは
買い手の税金的なメリットにもつながる場合があります。
上手に設計すれば、売り手も買い手も節税ができます。
買い手にメリットをもたらしてあげることができるのならば、
それはМ&Aの代金に反映されるのが自然でしょう。
「税金を少なくしてあげるから、会社の売買代金を高くして」
こう売り手としては主張することができるのです。
以上がスピンアウト取引についてのお話でした。
なお、実行するさいは税理士さんと相談しながら慎重に進めてください。
生兵法は大怪我の基です。