会社に寿命はありません。
ゆえに「ゴーイングコンサーン」という、会社が将来も事業を継続していくことを前提とする考え方があります。
しかし、現実には永続できる会社というものはほぼ皆無でしょう。
どこかのタイミングで命を終えているケースが多いのが事実なのです。
30年続く会社は2%しかないとも言われます。
自社の永続を願うのは当然ですが、会社の終焉も想定しておいたほうがいいのでしょうか。
痛いこと、都合が悪いことに目を向けたくないのは、誰でも同じです。
しかし、それを「悪いことは起きない」と、自己都合でものごとをとらえた変な楽観主義に陥ってはいけません。
過去を振り返えると、私たちはこんな過ちを繰り返してきたはずです。
経営が苦しくなってくると、社長は視野が狭くなって、無理を重ねがちです。
もちろん冷静な判断はできません。
先に撤退ルールを決めておければベストなのでしょう。
たとえば、3年赤字が続いたらスパッと会社をやめると決めておく、など。
冷静な判断ができなくなることを想定し、冷静なうちにルールを決めておくわけです。
資金繰りに窮すると、手当たり次第に親族や友人から返せるあてのない借金を重ねてしまうこともよくあります。
さらには、高利の業者に手を出して・・・これはいけません。
結果どうなるでしょうか。
もともと返せる見込みのない借金をしています。
当然、お金が回らなくなり、返せなくなります。
そのとき、銀行などの業者だけでなく、好意で貸してくれた人の信用までも踏みにじってしまうのです。
お金の問題で人間関係が崩壊させてしまいます。
ここから学ぶべきは、会社で必要なお金を調達する先は、銀行までにしておくということではないでしょうか。
業として金貸しをしているわけでもない人まで巻き込むべきではないのでしょう。
せっかくですので、お金が足りなくなったときの支払順序についても考えてみます。
ありがちなのは、苦しい時に仕入れ業者や外注先の支払を後回しにすること。
自社が客の立場なので、言いやすいからでしょう。
しかし、これは違うと思います。
仕事が回せなければ、会社はなりたたなくなります。
そのためには仕入れ業者達の協力がなければなりません。
自社のスタッフにつても同様の考え方です。
給料の支払いを後回しにするようでは、社長についてきてくれないでしょう。
自分よりも立場が弱い相手をぞんざいに扱ってきたため、本当に苦しい場面で仕入先やスタッフにそっぽを向かれたケースを知っています。
これでは再生は実現できるはずもありません。
要は、銀行の借金返済よりも、取引や日常の仕事に直結する相手の方が優先度は高いということです。
こういう場面で銀行を恐れる方は多いのですが、苦しい事情を隠そうとしてより状況を悪化させたケースをたくさん見ています。
誠意をもってオープンに情報を開示すれば紳士的に対応してくれる相手です。
このあたりも、会社の終わりを知ろうとすることで得られる行動原則なのでしょう。
最後に、終焉の場面でも事業を残せる可能性があるということをお話したいと思います。
負債で行き詰ったある交通関連の会社がありました。
そのとき僕は社長と共に、同地域で長年しのぎを削ってきたライバル社へ出向き、会社の窮状を伝えました。
そして「一部でもいいから事業を引き受けてくれないか」と頭を下げたのです。。
お互いが憎み合っていたような関係です。
頭を下げた社長は本当に悔しかったでしょう。
しかしその決断のおかげで、相手先の社長が理解を示してくれました。
おかげで数十人の雇用を残すことができたのです。
これも事業継承のひとつのかたちなのでしょう。