ビルの3階には、
風通しの良いすっきりしたオフィスが誕生しつつありました。
机や建具には素材感があります。
今回の東京出張の機会に、お客さんの会社に足を延ばしました。
専務がむかえてくれて
「3階も見て行ってください」と。
この新しいオフィスづくりは、
僕らにとって象徴的な出来事なのです。
僕と同世代の専務は、
父が社長を務める家業に入りました。
状況が良くないことは知っていたけど、あえて。
でも、想像以上だったそうです。
本社のある東京と、
大阪の支店は全く統制がとれていません。
それどころか、過去のしがらみもあって、
憎しみ合っているかのようでした。
業績は冷え込み、借金は膨らんでいました。
銀行の返済猶予を受けてどうにかお金を回している状況です。
「前を向いて仕事ができる状況をつくりたい・・・」
弱りきった顔をした専務が、
僕にコンタクトをとってきたのは3年近く前のことです。
それからいろんなことがありました。
銀行に出向いて、取組みへの理解を懇願したり。
大阪のトップも交えて何度も話し合い、
ときにヒートアップすることも。
関係者全員の同意を得て進んでいた分社の話が、
ある一人の心変わりで反故にされたときは
「ふざけるな」
と思わず声が出てました。
最後は一度立ち消えたプロジェクトも再建することができ、
無事にかたちになりました。
今では銀行への返済も再開できたし、
本店支店間の関係も良好なものに変わっています。
過去から引きづってきた負をようやく整理し終え、
今度は前向きな仕事に取り掛かりはじめたのです。
今回の新オフィスはその象徴。
「ようやくここまで来れましたね」とお話し、
しみじみとしました。
「まだまだ問題も多いし、従業員にもっとボーナスを出せるようならない」
と専務は語ります。
それでもマイナスだった状況から、ゼロまでは来れました。
これをもって、ひとまず僕の契約は終了となりました。
まずますの結果を出せてうれしい気持ち半面。
深く関わってきた会社と離れる寂しさ半面。
こんなところですね。