事業継承では株式を分散させない
正直、株式の話なんて、
小さな会社にとってどうでもいい事だと思います。
普段そのことを意識している社長は少ないでしょう。
でも、それゆえに株式がトラブルの原因になっていることが
結構あるものです。
事業継承では経営権を承継することが最重要ですが、
株式(=財産)の承継も考えておかなければなりません。
はっきり認識していただきたいのは、
小さな会社ならば株式は社長がすべて持つべきです。
議決権の過半数が云々という話は
どこかに捨てておきましょう。
トラブルを回避し、
経営的な自由を確保しておくことが最優先。
相続税のことを危惧して
株式を分散して相続させようとする方がいますが、
やめておいた方がいいです。
そのパターンで後々問題になって
私のところに相談が寄せられたパターンはたくさんあります。
分散株式や名義株はどうする?
もう株式が分散してしまったならば、
集める努力をしなければなりません。
かつては株式会社を作るために
会社設立に発起人が何人も必要だった時代があります。
その名残で、名義だけの株式を持っている他者が
存在していたりすることもあるのです。
名義だけと言っても、あまく見てはいけません。
これらも集める対象です。
後継者は当時の様子を知らないことが多いはずです。
株式を譲ってもらう交渉をするにも、
お子さんには荷が重いものでしょう。
株式を集める算段をつけるのは、
先代の仕事だと思ってください。
株式をどうやって子に継承するか?
株式を継承するにはどうすればいいか。
方法としては主に3つあります。
①売買
親子間だろうが株式を対象に売買を行うことができます。
なかなか売買で移転するケースは少ないかもしれませんが、
本来ならば後継者は株式を買い取って会社を継ぐべきです。
子供だからと会社を継ぐ義務はない一方で、
やりたいのならお金を出してでもやるものだと思います。
後継者からみたら事業承継は投資の一面もあります。
株式を買い取って会社を運営し、
それ以上の利益を出す。
逆にそのリターンが見えているからこそ株を買う。
商売なのだからこれが本来の姿です。
身内だからというあまえが、
事業承継がこじれる原因になってしまっている気がします。
なお、株の値段は原則自由ですが、
税務上の算定基準よりも安すぎたりすると
税金の問題が発生することがあります。
②贈与
親から子へ株式を贈与することも可能です。
生前のうちに株式を移転したいときには
贈与が使われることが多いでしょう。
一般的に贈与税は高額になりがちなので、
株価ややり方に注意が必要です。
年々少しずつ贈与をしていく暦年贈与というやり方と、
相続時精算課税という制度を使って
一気に株式を動かすやり方があります。
③相続
お子さんが後継者ならば、
いずれ相続で株式を手渡すことができます。
それでも相続税の問題が起こる危険があります。
また、相続権を持つのは
後継者だけではない場合もあるでしょう。
遺産分割や遺留分といった
ハードルも越えなければなりません。
事業継承の株式移転計画を立てよう
漫然と株式を移すのではなく、
まず計画を立てましょう。
年数と移転する株式の数、
さらにそれにかかるコストや税金を検討します。
もちろん、その通りに行かない場合もあるので、
遺言なども使って保険をかけておくといいでしょう。
株は事業継承の従たる話
税理士に言わせれば、事業承継は税金の問題です。
「相続税をどう減らすか」が一番の関心事だったりします。
株式の継承にフォーカスすると、
どうしても相続がテーマになり勝ちです。
しかし、経営面から考えると、
相続と事業承継は別物だし、
相続が起きてからはじまる事業継承では遅すぎるのです。
形式的な株式の話は、それはそれで重要です。
しかし、会社は生き物であり、
それを殺さないようにつなげるというソフト面こそが
一番大切なところです。
主従を間違わないようにしたいところですね。