「企業は生産性をあげろ!」
号令が響き渡っています。
ここに最近は「賃金アップだ!」も加わりました。
どうやって生産性を上げるのか。
無駄な会議を減らして、デジタル技術をうまく使って・・・という論調です。
僕は中小企業の経営を支援しています。
なのであまり大企業のことは分かりません。
ただ、たまに大企業とやり取りする機会があると、たしかに無駄が多いと感じことがよくあります。
「それ意味あるの?」と思うような社内手続きを目にして、形式ばかりにこだわる姿勢を感じたり・・・
たしかに大きな企業は、仕事のやり方を簡素化する余地があるのでしょう。
でも、中小企業。
こちらは生産性向上への道筋がまったく異なると見ています。
僕は「中小企業の生産性向上とは『値上』でしかない」と感じています。
多くの会社で、商品、サービスの値段が安いのです。
安すぎるのです。
この状況で、会議を減らしたくらいじゃどうにもなりません。
従業員の賃金アップだってそう。
今、十分な利益が出てないのに、どうやって賃金を上げるのか、と。
怒られてしまいそうな言い方をしますが、顧客に媚びた安売りが常態になってしまっています。
たしかに、昨今の原料価格の高騰にともなって値上げに動いた会社はありますが、それも物価の上昇分を補うだけ。
この生き方を変えないとダメ。
このまま身を削っていてはいずれにしても経営は成り立たなくなります。
だったら思い切って価格を上げてはどうでしょうか。
たとえば、今の価格を3倍に値上すると想定してみましょう。
「そんなことしたら売れなくなる!」と社長さんは言うはずです。
たしかに売上げは下がるでしょう。
でも、お客さんが3分の1残れば、値上前と利益は同じです。
2分の1残れば・・・それはもうウハウハです。
(話の都合上、計算を単純化している点をご了承ください)
価格を3倍に、お客さんが3分の1になった後の世界は、どうなっているか想像してみましょう。
ものすごーーーーーく、ゆとりのある仕事ができますよね。
なんと言っても、仕事は3分の1に減ったのですから。
慢性的に積みあがった仕事で疲弊していた従業員さんが、イキイキ働きはじめます。
余裕があるから、顧客に対してより良い仕事を提供できるようになります。
もちろん社長も気楽です。
パラダイスじゃないですか?
安く売りでこき使われ続けることと比較すれば、勝負をかけてみる価値がある気がしますが・・・
そういえば、かつてこんなことがありました。
値上げを実施したクライアントの社長がいました。
社長は浮かない顔をしています。
「仕事が減って暇になってしまった。社員の手が空いてしまっている」とボヤいています。
でも数字を見てみると、売上は下がったものの、利益は以前よりもはるかに増えていました。
効率が良くなったのです。
値上は大成功です。
ところが社長は気持ちが悪い。
理由は、忙しくないから。
「社長、これってある種の病気ですよ」と、僕ら二人で笑いました。
社長は、自分が忙しくないと不安になる。
従業員さんが暇そうにしているとイライラする。
なんか、わかるなぁ。(笑)
でも、時間的なゆとりを拒んだらドツボなんでしょうね。
値上、どうでしょうか?
やっぱり怖いですよね。
だから社長は、いろんな「やらない」理由をもちだして反論を試みます。
僕としても、みんなが取り組めるとは思っていません。
ただ勝負どころは、今だと感じるわけです。
値上によって、余裕をもって働ける会社。
今後も存続できる会社になるには、ここを目指すしかないと思います。
人手が減る中、働きやすさは人材確保の必須条件でしょう。
そのためには先に余裕を作らなければ、何もはじまりません。
こんな経営、実現できたら最高じゃないですか。
利益率が高くて、仕事に余裕がもてる経営。
まさにキリギリスの経営です。