欠陥エアバッグのリコール問題で経営難が続いているタカタです。
同社のエアバッグが作動時に異常破裂し、金属片が飛び散る問題がありました。
米国などで死者が15名に上ると明らかにされています。
この事件の対処のためにタカタの財務内容は急激に悪くなったのでしょう。
今月中に民事再生法の適用を申請する予定だそうです。
その中で「会社分割を利用し、健全な事業を新会社に移すことも含め検討をしている」というニュースがありました。
この窮地において事業継続を諦めて、会社を消滅させるというのも一案なはずです。
しかし、エアバッグの事業はまだ稼げると判断したのでしょう。
そこでその事業だけを会社分割という手法を使って新会社に移して、事業の存続を狙います。
製造設備や人材、外注先、流通・・・など「このまま無くすには惜しい」ということなのだと思います。
この新会社にはスポンサーが付き、支援をしてもらえる様子です。
残された会社をどうするか?
事業を別会社として外に出すということで、元のタカタはどうなるでしょうか。
こちらは消滅を想定し、清算に入るようです。
事業を失ったのだからタカタはもう売り上げを作る仕組みを持ちません。
会社には債権者への返済やリコールの費用などが残ります。
これらを粛々と法律に則って生産して後始末をつけようというのです。
なんでこんな分社を使うのか?
まず、事業を別会社にすることで、既存の負債と切り離されます。
おそらくそれだけでかなり財務内容は改善されるのでしょう。
すると、スポンサーを呼び込める可能性も高まります。
スポンサーの立場になってみればよくわかります。
彼らとしては財務内容が悪いまま支援することはうれしくありません。
自分たちが提供したお金が、リコール処理などの後ろ向きなことに消えてしまっては無駄な投資になってしまいかねないのです。
しかし、財務内容が健全な状態ならば、その投資は意味をなし、ひいては自分たちへのリターンにつながります。
財務内容の健全化だけを考えれば、会社分割以外にも方法はあります。
それでも会社分割の場合は、債務者(タカタ)主導で話を進められるし、スピーディーに再建が実現できるのです。
このニュースから得られる教訓は?
タカタは大企業なので、多くの中小企業の関係者の方には関係のないニュースと思われるかもしれません。
しかし、そんなことは全くありません。
この手法は小さな会社でも使えますし、実際私もお客さんの会社に提案することがあります。
債務が積みあがってしまっても、会社分割で復活できる可能性があるのです。
ただ、ここで条件があります。
最も大切な条件は、再建するにふさわしい事業があることです。
タカタの場合も、エアバッグはまだ稼げるという期待があるから支援が受けられるのです。
「そんなの当たり前だ」と思いませんか。
しかし、経営危機に陥った社長さんを見ていると、そうは思えません。
たとえば銀行への対応ばかりに時間を使っていたりします。
新たな融資を受けられるならまだしも、こんな状況になれば銀行はもうお金を出すつもりなんてありません。
そんな銀行に対応するために大切な時間を使ってどうするのでしょうか・・・?
事業の価値は減っていくばかりだと思うのです。
財務内容が悪化しても、事業に価値があればまだ手はあるのです。
これを忘れないでいただきたいです。
タカタの取引先は?
おまけに、タカタの取引先の立場を考えてみましょう。
タカタには仕事を発注していた外注先などがあったはずです。
彼らはタカタの不調で仕事量が減るだろうし、すでに終わった仕事の売掛金の回収ができなくなる場合もあり得ます。
その結果、連鎖倒産のようなことが起きるかもしれません。
こうなると最悪です。
もし裁判を起こして回収しようとしても、まず上手くいかない場合がほとんどでしょう。
裁判には勝つとしても、売掛を払わせるだけの資力を相手が持っていないのが普通なのです。
こう考えると事前に対策を打っておくしかありません。
倒産保険のようなものに加入して備えておくこと。
仕事の受注先を増やして、売掛金回収不能のリスクを分散しておくこと。
こんなところしか手はないのでしょう。
銀行などは担保を取ったりしながら、自分たちの保身をしっかりやっています。
こういう倒産などの場面で一番ダメージを食らうのは、外注を請けていた取引先などだったりするのです。
起きてからでは遅いので、前々からそのような事態を想定して準備しておきたいところですね。
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