「廃業するから相談にのってほしい」
ネイルサロンの女性オーナーから依頼がありました。
長年続けてきたけれど、ここ数年間の売上は減少。
そして、本人は別の新しいことをやりたいとお考えでした。
ご要望どおり、私がお手伝いしながら、廃業を粛々と進めることもできました。
しかし、あえて「継手を探してみませんか?」と提案した次第です。
継手が見つかれば、部屋の原状回復が不要になるなどの金銭的メリットを受けられます。
そしてなにより、これまでやってきた価値を残し、お客さんなどの関係者への迷惑を減らすことができるからです。
この提案をオーナーさんも受け入れてくれました。
もし継ぎ手が見つからなかったとしても、そのときこそ廃業をすればいいのですから。
チャレンジの代償なんてほとんどないのです。
早速「ネイルサロンの継手を探しています」と、僕のフェイスブックやウェブマガジンで告知しました。
するとすぐに希望者が見つかり、何度かのミーティングを経て承継が決定したのです。
今は新しいオーナーのものでサロンは継続されています。
継ぎ手との交渉のすべてが順調だったわけではありません。
継承後のサロンの運営に対して、先代は不安や不満を感じていました。
「自分のときと違う」と。
これは事業継承でよくある話です。
こんなときでも「廃業させるよりましだ」と考え、これから責任を背負ってやっていく後継者のやり方や考え方を尊重してあげてほしいところです。
完全に先代をコピーすることはできません。
「うちみたいな古い商売なんて・・・」とか、「小さい会社だから」と、承継をあきらめてしまっているケースが多いのかもしれません。
ネイルサロンのオーナーもかつてはそうでした。
しかし、行動を起こせば、事例のように相手が見つかることがあります。
同じような展開で、廃業から事業継承へ進んだケースは他にもあります。
また、僕自身、自分の立ち上げた司法書士事務所を事業譲渡したときもそうでした。
当初は廃業するしかないと思っていましたが、同業他社に声をかけてみたら「ぜひ引き継がせて欲しい」という展開になりました。
おかげで事務所を原状回復させる撤去費用などを削減することができました。
それよりなにより、自分が作ってきた事業が他者から評価されるのはうれしいことでした。
スタッフの優秀さを先方からほめていただけたときは、この上ない喜びを感じたものです。
これまで築いてきたものを、ただ単に無くしてしまうのは惜しいところです。
後継者がいなければ「誰か継ぎませんか?」と声をあげてください。
恥ずかしいことだとか、後ろめたいことだとは思いません。
その一歩がスタートです。