まずは相続発生時の株式の動線をおさえる
お孫さんから声がかかり、もうすぐ90歳となるおじい様とおばあ様から相談をお受けしました。
おじい様は会社を創業し、現在は長女とその夫が経営をしています。
長女夫婦の子供は会社を継ぐ気が無く、今回私を見つけてくれた三女の子供さんが次の後継者となる流れです。
社長のやり方が気に入らない
おじい様たちは、娘夫婦のやり方にたいして非常に不満を感じていました。
会社のことは聞いても情報を開示しません。
そのくせ、銀行から借金をするときには「個人保証の判をおしておいてくれ」と当たり前の顔をして要求してきます。
会社を個人の食いものにしている話も耳に入ってくるし、その他でもバカにされたように感じる場面がたくさんあったそうです。
「自分が作った会社のためにも、どうにかしてやりたい」と悔し涙を流しながら語っていました。
実は長女が持つ株式は全体の4分の1程度しかありません。
それ以外は、主に父と母が保有しています。
株主総会を開かせて取締役の解任を決議すれば、娘夫婦を辞めさせることができそうです。
遺言を作って守りから固める
ただし私は「まずは株式の行く末を落ち着かせておくこと」を提案しました。
もしこのままおじい様とおばあ様に相続が発生したら、株式は相続財産となります。
遺産分割で話し合いをしなければならなくなるし、結果として長女の議決権が増えることも考えられます。
話し合いが紛争になる可能性も大いにありそうです。
お二人の年齢も考慮して、まずは遺言を作り、株式を三女のお子さんに集めていく流れを確保しておいた方がいいと考えました。
同様に、長女が持っている株式もいずれ決着をつけなければいけません。
仮に三女のお子さんが社長となるときに、敵対しかねない相手に株を持たれていては厄介です。
三女かそのお子さまに、資金も一緒に相続等させることで、長女から株式を買取れるようにしておきたいとも考えました。
上記のような株式のことを最優先しつつ、その他の土地や建物などの資産の帰属先も含めて遺言に落し込むことにしました。
効力を確実にするため公正証書の遺言にします。
公正証書遺言は、公証役場の公証人立会のものに作成される遺言です。
費用はかかりますが、形式面のミスを回避できるし、相続発生時、家庭裁判所の検認という作業を省けるので楽です。
出張も可能なので、お二人の健康面も考ええて公証人に自宅まで来てもらうことにしました。
遺言執行者には私が就任し、相続が発生したときにすぐ指示や手続が行えるようにもしています。
今後の攻めを検討する
どうにか無事に遺言を完成させることができました。
ここからようやく社長解任の件などを検討できます。
あれこれ一気に進めようとすると混乱を生じさせてしまいます。
近々、弁護士のところに行って、そのやり方等を相談をさせてもらうことにしました。
私も一緒に話を伺います。
また可能な範囲での節税対策もしておきたいところです。
それなりの相続財産になるため、相続税の申告等は無視できない案件です。
少しでも税金を減らして、今後の備えとしておきたいのが本音です。
ただし、税金を優先させると落とし穴にはまりやすくなります。
今回のようにまず遺産分割対策を優先し、それからできる範囲で税金の対策をしたほうがベターな場合が多いのでしょう。
先に税金を優先すると、法的なリスクを抱えたり、当事者感情で衝突しやすくなってしまいます。
アクションのススメ
事例をお読みいただき、ありがとうございました。
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