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「事業承継で地域おこし」を考える

 

ある方から「地域として事業承継に取り組んでいこうと考えている」と軽く相談を受けました。

素晴らしい取組みで、ぜひとも成功させていただきたいところです。

僕がこれまで取り組んできたこともふまえた、事業承継と地域について書いてみます。

 

既存の事業で地域を活性化!?

どうも街づくりや地域おこしと商売は切り離されて考えられがちです。

行政的な枠組みがそうなっているからでしょうか。

商店街などは特別で、一般的に商売と地域の取り組みは別物と見られてしまうように感じます。

 

はたしてそれがいいのでしょうか。

僕は地域にある商売ほど、地域に対してインパクトを与えるものはそうそうないと思うのです。

日本には400万社ほどの会社があって、99%は中小零細企業です。

その小さな会社たちが、人を雇ったり、ものを仕入れて売ったりしています。

生み出される交流や経済効果はすごく大きいのでしょう。

 

地域の個性にも直結します。

おもしろい事業をしている会社や、そこにしかない店や商品は、他にない個性を作ってくれるという意味で地域の宝です。

この点、地域の個性を保つという意識が、どうも我々は薄い気がしてなりません。

どの街も同じような景色となってしまっているし、大きなものに依存うることへの抵抗感も少ないように思いいます。

短期的な利益のために個性を売り渡してしまっているケースに心を痛めることもたくさんあります。

僕は商売サイドにいる人間なので、個性は本当に尊いものだと思います。

ライバルとの差別化の源泉であり、競争力に直結するものです。

街だったり、地域であってもそれは同じはずです。

「他と同じで、無難にいこう・・・」の発想が命取りとなるでしょう。

 

アプローチをゆるさない事業

話がそれたので戻します。

地域にある事業は、経済的だったり人的な交流の核となるし、個性づくりにも寄与するものです。

ならば、その活性化は地域の元気に直結するはずです。

今のご時世どの地域でも、空き家の活用、移住促進、女性起業の応援、住民集めてワークショップ・・・などに取り組んでいます。

それはそれで悪くはないと思うのですが、地域の活性化という面では、すでに地域にある事業のブラッシュアップの効果には及ばないでしょう。

 

じゃあ、既存事業のブラッシュアップをすればいいじゃないか、という話になるのですがこれが簡単ではありません。

事業はみんなのものではないのです。

ほとんどの場合は社長のものであって、個人によって囲い込まれているのです。

市民や行政がアプローチできる権限がないのも事実です。

 

現代の地域に根付く事業の多くは、閉塞感を抱えています。

業績は下がっているし、業界の先行きは明るくありません。

変わる環境に対して新たな打ち手を見いだせていません。

こういうときは解決策を外に求めたほうがいいはずですが、より心を閉ざしてしまう傾向があるものです。

高度経済成長の頃と比べれば、事業を成立させることは難しいのでしょう。

しかし、やり方次第でまだまだどうにかできる事業はたくさんあるはずです。

それこそ、ゼロから起業するよりは成功率はずっと高いはずです。

 

事業承継がチャンスとなる

さて、既存の事業が振るわない理由があります。

それが社長の高齢化です。

日本社会全体が高齢化していますが、中小零細企業の社長も同じように高齢化しています。

平均年齢は60歳を超えているのです。

一般論として、社長が高齢となると第一線で活躍し続けるエネルギーや新しい発想が不足しがちです。

地域経済を閉塞感が覆うのは当然なのかもしれません。

 

社長の高齢化は地域の経済の行き詰まりにつながりますが、考え方によってはチャンスにもなりそうです。

多くの事業には後継者がいません。

もし、若くてやる気があって、新しい感覚をもつ人が既存事業にアプローチできるようになれば、地域社会は変わるのではないでしょうか。

「当店は閉店しました。これまで長らくありがとうございました」と、張り紙一枚で店がたたまれた光景を、みなさんは何度も見たことがあるはずです。

そしてなかには「やめるんだったら継がせてくれればいいのに」と、思ったことがある方もいらっしゃるでしょう。

やめる人とチャンスを求める若者との間でバトンをつなげていないのです。

もし、バトンがつながるようになれば・・・

後継者がいないという事業承継の問題はピンチであり、チャンスにもなり得るのです。

 

僕のこれまでの試み

僕は事業承継のコンサルティングなどをしているので、出会った案件をこなすノウハウは持っています。

しかし、出会える案件は氷山の一角で、実際には表に出てこない案件が山のように世の中にはあります。

表に出てこない案件を相手にして、誰かがが継げるように、これまで事業を掘り起こそうと取り組んできました。

 

なお、やりたかったのはいわゆるМ&Aではありません。

ビジネスライクで、多額な仲介手数料を必要するような会社の売買の話ではありません。

もっとヒューマンスケールで、人と人とのつながりによって事業のバトンがつながれるようなイメージです。

「なりわい承継」なんて言葉がちょうどいいニュアンスです。

 

執筆や講演、ウェブマガジンの運営などをやってきました。

しかし、取り組んではみたものの、はっきり言って、ほとんど効果はあげられていません。

個人レベルでやってきたことなので、そもそも影響力が足りなかったという面があります。

そのほか今思うこととしては、事業承継は空中戦には向かないということです。

顔の見える関係で、地域に根付いた取組みを地道にやっていくことが近道になるように感じています。

僕もそうだったし、他にもポータルサイトを作って効率よく事業承継のマッチングをしようとした人はいたはずです。

でも効果はそんなにあがっていないのではないでしょうか。
(あまり他を研究していないので、間違っていたらごめんなさい)

やはり事業承継というのはデリケートなものです。

心理的にまだまだインターネットがアプローチしづらい分野のような気がしています。

 

地域団体の取り組みは?

むしろやるならば、地域の小さな範囲でアナログ的な方法で掘り起こしていったほうがいいような気がします。

現役の社長たちに「後継者がいなかったり、事業承継で困ったら、あそこに声をかければいい」という認識を作れればいいのです。

その取り組みには行政や地域経済団体などの中立的で信頼感のある立場が向いていると思うのですが・・・

 

現状でもその手の団体が取り組んでいないわけではありません。

しかし、案件の掘り起こしに積極的ではなかったり。

寄せられた相談をハンドリングする能力に欠けていたり、といろいろ不足を感じます。

他によくあるのは、近しい関連団体でネットワークを組んでいるとアピールしているケースです。

たいていは誰もイニシアチブをとらず、機能していないのが現実ではないでしょうか。

ある団体では「事業承継の窓口です!」とアピールしていながら、寄せられた相談をМ&A会社に引き継ぐだけだったりします。

お金を出して買ってもらえるケースなんてほとんどないのです。

ちぐはぐな取り組みもたくさん溢れています。

 

実現を願います!

と、地域で事業が受け継がれる仕組みづくりにおいて、これまでの取り組みと僕の個人的な考えを書き出してみました。

実現させたいけれど、奥村個人としてはできることに限界も感じています。

誰かがその取り組みを成就させてくれればと願うばかりです。

もちろんそのために何かできることがあれば、お役に立ちたいとことです。

〜お知らせ〜
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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は1000社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられた神戸に住むコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』
ゴールを見すえる社長のための会【着地戦略会】主宰

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