昨日のブログで「会社の金銭的評価と実際に売れるのかは別だ」という話をさせてもらいました。
もうちょっと書きたいことがあったので、その続編のような記事を書かせていただきます。
後継者がいない会社が増えています。
事業承継問題として、社会的課題にまであげられるようにもなりました。
そして、それを解決するツールとしてМ&Aが担ぎ上げられています。
上場しているМ&A仲介会社の従業員の給料の高さも話題になったりしていますね。
M&Aで本当に事業承継の社会的課題は解決できるのでしょうか。
言い方をかえれば、M&Aで本当に会社は売れるのでしょうか。
僕なりの答えをお話する前に、まずM&A仲介会社のビジネスを見てみましょう。
中小企業向けのM&A仲介会社を頭の中でイメージしています。
彼らは銀行や会計事務所から売却希望のネタを集めることを得意としてきました。
独自にセミナーを開催したり、中にはホームページ経由で中小企業の社長と接点を持つこともあるでしょう。
集めてきた会社の社長に対しては、自社が関わったМ&Aの成功事例を紹介します。
「後継者がいなくて廃業しかないと思っていた会社が、M&Aを選択。
弊社が買い手を見つけたことで、〇億円を手にすることができました!!」
という具合に。
ちなみに、お金のことをあまりアピールするといやらしくなります。
会社を売ろうとしている社長も善人でいたいので、あまり露骨なのは嫌われます。
そのあたりのデリカシーが営業上はとても大切なようです。
「とはいっても社長、お金じゃなくて、従業員のためを想ってのМ&Aなんですよね」と、社長の罪悪感をマネジメントしてあげます。
このあたりはM&A仲介会社の営業マニュアルの基本中の基本なのでしょう。
お金と社会的意義の両輪を説き「あなたも会社を売ってハッピーリタイアしましょう!」と会社売却をすすめます。
こうしてたくさんの売却希望案件を集めることが大切なのです。
集めた会社をどうするのでしょうか。
売買の成立をめざして買い手を探します。
1社М&Aの成約をさせれば、ガツンと仲介手数料を手にすることができるのです。
ここでM&A仲介会社の営業マンの気持ちになってみてください。
あなたならば、どんな会社の案件を一生懸命売りますか。
それは「売りやすい会社」と「売ったら高額の手数料が手に入る会社」ではないでしょうか。
できるだけ効率よく仕事の成果を出したいことでしょう。
同じ労力を使うなら、一気に稼げる会社を売りたいでしょう。
こんな心理がはたらき、集めた案件の中でも、その上澄みの会社の売却にばかり力が入れられるはずです。
営業マンが売りたい会社にに入らなければどうなるか。
あまり力を入れてもらえず、売れ残る可能性が高いですよね。
うまく経営されているM&A仲介会社というのは、たくさんの売却希望案件を集めて、売れそうな会社だけを効率よく売りさばくビジネスモデルなのだと考えます。
逆に言えば、たくさん会社が売れ残るビジネスモデルだとも言えるでしょう。
こんな話をすると、ビジネスモデルや姿勢を批判する方がいらっしゃるのかもしれません。
でもきれいごとを言っていても無意味でしょう。
それがビジネスだと言われれてばそれまです。
重要なことは、会社はそうそう売れるものではないという事実です。
僕らとしては、そんな事実も視野に入れつつ現実に対応するしかありません。
夢を見させられて舞い上がり、後でいいように使い捨てにされるのはまっぴらごめんです。
会社なんてそう売れるものではない、ということです。
世の中には売れた会社もあります。
でも、それはたまたまのラッキーです。
当事者として好ましい例外を手にできれば、うれしいことでしょう。
そんな人がいれば「よかったね。おめでとう」と言ってあげればいいでしょう。
でも忘れてはいけません。
それはあくまで例外です。
では、中小企業の経営者にとっての原則とはなにか。
「廃業」なのでしょう。
自分で散らかしたことを、自分で片づけるという意味であたりまえの落としどころです。
相手方の存在なしに自分で決定し、自分で進める道でもあります。
小さな会社の経営者は、廃業を原則とし、廃業を想定しながら経営したほうがいいと思うのです。
原則と例外。
このふたつは区別して意識しておかなければいけません。
僕が司法書士を受験するためにはじめた法律の勉強でも、もっとも大切なことは原則と例外を意識することでした。
すごくあたりまえのことのようですが、私たちは原則と例外を逆にしてしまうことがあります。
例外の方へ心が惹かれた結果、例外を原則と捉えてしまったり、と。
希望的観測を原則にしてしまうのです。
そんな罠に陥らないように、できるだけ冷静にものごとを見たいと思うところです。
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