伝統工芸の会社を引継いだ僕の友人は、親の代から比べると売上げベースで15倍に会社を成長させました。
その彼に事業承継が成功した秘訣を聞くと「親の目が届かないところで自由にできたから」と言います。
活躍している後継者を見ていても同じようなケースがほとんどです。
好き勝手やらせてもらいながら、チャレンジを重ねてきた後継者が成功しているのです。
自由にやらせてみる。
これが最高の後継者教育なのではないでしょうか。
後継者育成の話になると、育てよう、という意識が働くようです。
作為的であって、成長をコントロールしようとする意識です。
そこから、定型的なプログラムを座学で学ばせようという発想になったり・・・。
しかし残念ながら、先代の思い描くように育てようとしたところで、その通りになることはまずありません。
後継者は、育てるのではなく、勝手に育つもの。
だとしたら、先代として後継者育成のためにやるべきことは、自由にチャレンジできる環境を与えることなのだと思います。
「うちの息子はまだまだ実力が足りないから・・・」と、後継者に何も任せない社長がいます。
実力不足はたしかなのでしょう。
しかし、任せないから育たないのかもしれません。
社長から見たら後継者の力量は見劣りするのが当然です。
そして、社長の能力をそのままコピーすることはできません。
ならば自由にやらせながら、後継者なりに能力を発揮してもらうしかないと思うのです。
会社を継いだものの後継者が上手く経営できないことはよくあります。
そこでも『自由』がキーワードになりそうです。
たとえば古株社員との関係に後継者が悩まされるパターンがあります。
年上で、「自分のほうが会社のことを知っている」という自負がある社員が、後継者の指示に従わないようなケースです。
社内の人間関係で後継者が自由を奪われないように、先代がメンバーの調整などをしてあげてもいいかもしれません。
また、採用を後継者がやるようになると「新社長に採用してもらった」と恩を感じる人材が社内に増えます。
当然、後継者としては経営がしやすくなるでしょう。
お金についての権限委譲も有効です。
後継者が会社のお金の決裁権を持ち、その判子がなければお金が動かないような仕組みにすれば、社内における存在感や権力は増します。
やはりお金を握ることは強いのです。
こんなイメージで風通しを良くし、後継者ができるだけ自由にやれる環境を作っていかれてはどうでしょうか。
そもそも「自由をいかに確保するか」は、経営の本質だったりします。