「息子は大手企業で働いていて、家業を継ぐ気はない」
家業の後継ぎ問題では、このようなケースがむしろ典型的なパターンとなってしまいました。
いまでも、血縁者が会社を継ぐのが普通と思っている方が多いでしょう。
しかし、小さな会社の現実としては、もはや子供が親の会社を継ぐほうが少数派です。
「子供がダメなら、社内の社員では?」という発想に、次はなります。
しかし、こちらもなかなか難しいところ。
会社を買い取るための資金や、お金を借りる信用がない。
社員の思惑も食い違います。
「会社員として生きてきたのに、社長をやるリスクなんて負いたくない」
「そもそも、経営をするつもりで準備してきていない」
「不安定な立場になることを妻に反対された」
・・・こちらの都合はなかなかまかり通りません。
このような背景もあって、第三者への事業承継が盛んにアピールされています。
いわゆるM&Aです。
「後継者がいないんだったら、会社はよそに売ればいい!!」
本や事業承継セミナーでは、こんな論調で語られます。
でも、ちょっと待っていただきたい。
わざわざお金を払ってまで買ってもらえる会社って、そんなに世の中にあるのか。
言うほど簡単なものではありません。
一般的に、成功事例ばかりが強くアピールされます。
裏に埋もれている失敗事例はあまり表に出てきません。
M&Aというツールで問題を解決できる会社は、本当は少数派なのではないかと感じます。
私たちは、“いい話”に足元をすくわれることを注意しておきたいですね。
さて、このような状況を考えると、結局のところどうすればいいのでしょうか。
私には、小さな会社の着地問題は『廃業』を基本に考えるのがいい、という結論が見えてきます。
なぜならば、会社内部での承継も、外への売却も、相手があっての話だからです。
相手はコントロールできません。
だから、よりどころにならないのです。
一方、自己完結できる廃業は、たよりになります。
自分でやってきたものを、自分で片づける。
改めて考えると、当然の姿勢だと言えなくもありません。
もちろん廃業の“やり方”は問われます。
上手にやれば周囲への損害を減らし、価値を残せます。
下手を打てば、自分も回りも傷つきます。
いずれにせよ、最後は廃業というかたちでもケジメを付けるというスタンスをもっておくことは、正しいものではないでしょうか。
「廃業なんてとんでもない」
こう反発される方もいらっしゃるのかもしれません。
でも、“倒産”と比較してもそう思いますか。
現実を見ずしてアクセルをふかし、最後は事故を起こして周囲に大損害を及ぼす。
これが倒産です。
「どうにかしなきゃ」と焦り、借りれるだけ借金をしたところで、最後は返せずに終了。
従業員や取引先まで巻き込んで恨まれ、自宅も失って・・・
自主的に状況をコントロールする廃業であれば、もっとスマートに着地できます。
現代の人の生き方や、中小企業の経営環境を考慮すれば、継がれない会社が増えることは自然です。
大きな流れに逆らうことはできません。
会社と社長が置かれた環境でうまくやっていくしかありません。
誰にも継がれないときも想定して、最低でも上手く廃業できるようにしておく。
会社の着地戦略における、スタンダードな姿勢だと考えます。