中小企業経営者の妻は大変です。
夫と会社で一緒に働いている方も、夫の会社には関わっていない方も,どちらもです。
夫のこと、夫の会社のこと、そして自分たちの生活のことが心配になることがありませんか。
私のクライアントの多くは、キャリアの終盤にさしかかった社長さんです。
その奥様ともなれば、社長である夫の健康が気がかりだったりするかもしれません。
でもどんなに心配したところで、できることは、横で見ていることばかり……。
もどかしいですね。
夫は最終的に会社をどうするのだろうか。
いつまで仕事を続けなければいけないのだろうか。
奥様だって、夫の会社のことが心配になることはあるでしょう。
でも、その話を夫に切り出したら、夫が不機嫌になったり、「大丈夫だ。心配するな」と煙に巻かれたり。
なかなか話もできません。
事実、一緒に働いている方は当然ながら、夫の会社とは距離を置いている方であっても、夫の会社については無関係とは言えなかったりします。
社長をしていた夫が亡くなり、呆然自失となる妻。
感情的に不安定な最中に、従業員や顧問税理士から「次の社長になってください」と要望が寄せられた方がいました。
気持ちの整理もついていないのに、そんなことまで今は考えることができない。
はっきりいえば、考えたくもない。
しかし、会社のほうも待ったなしで、次の社長が決まらなければ何もできないのですから、関係者が急かしてくるのも仕方がないところです。
こんなケースで、社長を継ぐことを決める奥様は案外多いものです。
正直なところ、やめとけばいいのにと感じたことも少なくはありません。
夫が遺したものを大事にしたいと思うのでしょうか。従業員などを目の前にして、どうにか助けてあげなければと思うのでしょうか。
情に厚く、割り切れない性格の方がたくさんいます。
自分の今後の収入などを考えたうえでの打算もあったりするのかもしれません。
でも、そう簡単に思惑通りには進みません。
妻が社長になった後、すぐ会社が経営難に陥るのは特別なことではありません。
そもそも経営をまわすことは難しいのです。
たとえ経理として会社の内部をよく知っていたとしても、会社の仕事をそつなくこなせたとしても、経営ができることとは別の話です。
特に中小企業の社長は、その人だから会社を維持できていた、という性質が強くなりがちです。
他者が同じことをやろうとしても、できるものではありません。
社長が死亡し、奥さんが会社を継いだとたん、従業員がまったく言うことを聞かなくなったという相談を受けたこともあります。
最初は、散々調子のよいことを言っていたそうです。
「奥さんが社長になってくれれば、俺たち全力で支えます」とか云々。ところが蓋を開けてみたら、社長となった妻の言うことなんて聞きもせず、好き勝手やるようになってしまいました。
中には、昼間から堂々とサボる面々まで出現。先代社長は「自分の顔」で会社の秩序を維持してきたのです。
社長の妻だからと言って同じ力を使えるわけではありません。
遺されることになるかもしれない妻のことを考え、備えをしてくれる社長がいます。
私のところにも「自分に万が一があったときのため、妻に苦労をさせないための策を立ててほしい」と相談に来られる方がいました。
真逆の社長もいます。正直なところ、
後者の方が多いものです。
社長の妻が、何かあった時のためにお金を蓄えていたところ、資金繰りが苦しくなった社長から「会社が危ないから、その金を運転資金のために貸してほしい」と依頼されました。
でも結局、その金は会社の借金返済のためにあっさり溶けてなくなりました。
すでに会社は死に体だったのです。
お金はもう二度と返ってきません。本来ならばそのお金は、会社が潰れた後の生活の再建のために温存しておかなければいけなかったのですが・・・
社長である夫名義の自宅に住んでいる場合には、そこに住み続けられるか危ぶまれるケースは多いものです。
会社が潰れれば、返済できなくなった借金は、連帯保証人である社長に請求されます。
社長は私財を投じてでも返済する義務を負うわけです。
この結果、自宅が競売にかけられることもあるます。
会社なんてつぶれるときはあっさりつぶれるもの。
いつ社長は資産を失うか分かりません。
そのとき一番害を被ってしまうおは、社長の妻かもしれません。
ほとんどの社長は、売上げをあげることしか考えていません。
会社の状況が悪くなったら、会社を維持することしか目に入らなくなってしまいます。
奥様の立場にたってみると、社長任せにしておいたら危険なことを意味します。
だからといって、夫のやることに口を出すこともはばかられることでしょう。
また、自衛のために、自分だけでやれることには限度があります。
社長であった夫が、奥様まで巻き沿いにして不幸にしてしまう。
こんな負の連鎖をなんとか阻止したいところです。