いつものようにカフェで過ごしていると、ビジネスマン二人の会話が聞こえました。
「会社を小さくすりゃいいだけだろ!」と。
二人とも僕よりも年下に見えます。
どうやら顧客か取引先の会社について、語っているようです。
売上が減っているようで、その解決方法を話し合っている様子。
そして、先輩らしきビジネスマンが結論として「売上が下がったのなら、それに合わせて会社のサイズも小さくすればいい」と。
「簡単なことだぜ」と、言わんがばかりのドヤ顔でした。
おっと、これは聞き捨てなりません。
「ちょっと待てお前たち!」と、考えを正そうとしたくもなりましたが・・・
そんな勇気とエネルギーもないのでブログを書きます(笑)
若者つかまえて説教するおじさんというのは、もう絶滅危惧種なのかもしれませんね。
煙たがられるの分かっていてやるのですから、あれはあれで偉いものです。
いや、煙たがられると思っていないのかな・・・?
そのビジネスマンは「会社を小さくすればすぐに解決だ」と語りました。
たしかに、それができればもう解決です。
しかし彼は、その前提を見落としているのでした。
なお、会社の話をしていますが、他の組織形態でも同じようなものだと思います。
会社のサイズは不可逆的に大きくなります。
小さくするのは絶対に無理だとは申しません。
しかし、大きくなるのは簡単で、小さくなるのはとても困難なのです。
会社が、孫悟空の持つ如意棒のように、伸縮自在だったらどんなに楽か・・・
自由に小さくできれば、倒産する会社は今の何分の1にも減るはずです。
経験したことが無い方にはなかなかイメージしづらいかもしれませんが、ダウンサイジングは想像以上の難度なのです。
一度大きくしたものを小さくすることに対する障害がいくつもあります。
たとえば、法律。
お給料を払うのが厳しくなれば、社長は従業員を減らしたいと考えるかもしれません。
でも、簡単に首を切れないことは、みなさんもご存じでしょう。
また、設備や仕組みもそうです。
大きな仕事をやるために社内の設備ややり方を設計したはずです。
それを「会社を小さくしたい」と方針が変わったからといって、小さかった昔に戻れるわけでもありません。
大きくなった今のサイズに合わせて借金をしていたりします。
会社が小さくなって売り上げが減るからといって、借金の返済額まで比例して減ってくれることもありません。
そして、感情面の問題まであります。
大きくするのは「いい話」と普通の人は感じるので心理的抵抗があまりません。
でも、小さくなるということは、恥ずかしさや罪悪感を想起させる場合がほとんどです。
それが嫌で、リストラなどに着手できない社長もたくさんいるのでしょう。
会社は小さくすることはすごい困難なこと。
これはコンサルタントとして仕事をしてきた経験のみならず、僕の社長経験からも断言できます。
一度巨大化にかじを切ったら戻れません。
雇用したスタッフが、いつまでも下っ端だったらかわいそうですよね。
僕はそう考えて、部下や後輩をつけられるように、新しいスタッフを増やしました。
あるときふと気が付いたのです。
これを繰り返さなければ組織が沈殿してしまう、と。
事実に気付いたとき、大型化はやめられないんだと愕然としました。
中には「他より大きくなれば優位なポジションがとれる。とにかくそれまで頑張ればいい」という意見があるのかもしれません。
僕もそう思ったことがありました。
でも残念ながら、どこまでも競争は終わらないのです。
しかも、大きくなるにつれて競争相手も強くなる・・・
マンガのドラゴンボールやキン肉マンのように、主人公の成長に合わせて強い敵が登場してくれるのでした。
競争から逃れるために大きくなるという発想は、ちょっと違うと思っています。
大型化の道を途中で戻ることができない。
ならば、戦略と覚悟があるのか。
会社を大きくしたい方は確認しておいたほうがいいポイントでしょう。
なにも大きくしてはいけないと言っているのではありません。
大きくなければできないこともあるはずです。
大きくすることは手段でしかありません。
問題は、大きな組織で何を実現するか。
そのための適正サイズというものがあるはずです。
こんな話をしていると、伝統工芸のカリスマと称される中川政七商店十三代の中川政七社長のことを思い出します。
4年ほど前でしょう。
中川社長が、新規ブランドを次々成功させ業績を大きく伸ばしていると、脚光をあびていた時期です。
(今でも業績を伸ばし、脚光を浴びていることは変わりません)
でも浮かれることなく、「ブランドの適正サイズはどれぐらいかなぁ?」と着地点を探していらっしゃいました。
イケイケで大きくしていくのではなく、適正なサイズを気にする姿に、すごいなぁと素直に感じました。
会社を小さくするのは困難だ。
だから、やみくもに大きくしようとしてはいけない。
僕があのビジネスマンの会話から思ったことです。
小さくすることは難しく、高い技術と関係者の理解が必要です。
僕は会社分割や事業譲渡という法律の技を使って、お客さんの会社を分社することがよくあります。
これも、会社を小さくすることは難しいという法則が背景にあるのです。
普通に小さくすることはあまりに困難だから、分けることでダウンサイジングを実現しようという取り組みです。
今のご時世「会社を小さくしたい」というニーズはたくさんあるのでしょう。
商売の世界だけではありませんね。
人口は減るし、GDPの減少も続いていた日本ですから、ダウンサイジングやコンパクト化が迫られている場所はたくさんあるのでしょう。
簡単はことではありません。
傷みもともなうこともあるでしょう。
でも、希望的観測で目をそむけたら、その負はもっと大きくなって返ってくるはずです。
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